ウェブページ上に広告を掲載する「ウェブ広告」は、費用が比較的抑えられ、ターゲティング性にも優れているため、費用対効果が高い広告として知られています。ただ、一度設定して終わりというものではありません。CV(コンバーション)を上げるため、定期的に運用して最適化する必要があるのです。
そこで今回は、ウェブ広告の最適化について解説していきます。とくに「リスティング広告」を例に、運用方法を具体的に紹介します。
ウェブ広告の最適化とは?
まずは、ウェブ広告の最適化について解説していきます。「最適化」や「CV」はIT用語でよく使われますが、どのようなことを指すのでしょうか。
「最適化」とは?
ビジネスで用いられる時の「最適化」とは、制約になる条件がある中でいくつかの選択肢を組み合わせて成果を出すことを狙う場合、最も望ましい成果を上げることを指します。
ウェブ広告の最適化とは?
ウェブ広告は、出して終わりではありません。継続的に運用して、ウェブ広告の費用対効果を高めることが「ウェブ広告の最適化」です。ウェブ広告は今や、基本中の基本とも言えるマーケティング手法です。出稿して終わりではなく、どのように運用していくかで得られる効果が異なってきます。
運用というと難しく感じるかもしれませんが、運用の仕方について知識をつけて最適化を図っていく必要があるのです。
CVとは?
ウェブ広告におけるKPI(重要業績評価指標)に多くの企業が設定しているのが、CV(コンバーション数)です。CVとは「獲得した成果の数」を表します。ウェブ広告を打つことで、商品の売り上げが伸びた、注文数が増えた、サンプルの請求数が増えた、メルマガ登録者数が増えた、資料請求の申込数が増えたなどが考えられるでしょう。
ウェブ広告におけるKPIは、具体的には「クリック数」「CV(コンバーション数)」「CPA(コンバーション単価)」などが考えられますが、KPIとして最も設定されているのは、CVだというアンケート結果があります。
ウェブ広告の最適化ポイント①ウェブ広告の種類を見直す
ウェブ広告を最適化する過程で、現在のウェブ広告の種類を見直してみましょう。実は選択しているウェブ広告の種類自体に問題があって、CVが伸びないのかもしれません。
潜在層を狙う
該当ジャンルに興味こそあるものの、どの商品にしようかなどははっきりせずニーズが漠然としている層が一定数存在します。そのような「潜在層」に働きかけるには、どのようなウェブ広告が向いているのでしょうか。潜在層を狙うには、幅広く働きかけるウェブ広告が有効です。ディスプレイ広告やSNS広告がおすすめです。
顕在層を狙う
購入したい、来店したい、などすでに比較検討段階にあるような層を「顕在層」と言います。コンバーション率が高いこのような層に働きかけるには、商品やサービスの認知度拡大と同時に、他社との違いが分かったり購入する決定打になったりするウェブ広告を選びましょう。リスティング広告は、キーワードを細かく設定できるのでおすすめです。また、高精度のペルソナ設定が可能なSNS広告も有効です。
DSPとアドネットワークの違い
「DPS」は広告を表示させる仕組みのことですが、ユーザーの年齢・性別・行動履歴に応じた広告を表示させられるのが特徴です。そのため、顕在層や年代・性別などで絞った特定の層に向けてのアプローチに向いています。
「アドネットワーク」は、ブログやSNSの画面上に表示される広告枠ネットワークです。加盟メディアに一斉配信するため、ターゲットを明確に絞る必要がありません。潜在層など幅広い認知拡大に向いています。
外注とインハウスの違い
ウェブ広告は打ち出して終わりではないと前述した通り、継続的に運用していく必要があります。その運用方法も、外注するかインハウスにするかがあります。
外注とは、ウェブ広告の運用を広告代理店に任せることです。プロによる運用なので短期間で成果が出やすく、自社の社員がウェブ広告の運用に携わらなくていいので、仕事に専念できます。ただし、依頼費用が掛かるのはデメリットです。
インハウスとは、自社でウェブ広告の運営を行うことです。外注するのとは異なり、費用が掛からないので広告費に大きな額を捻出できない企業でもウェブ広告を打ち出せることでしょう。広告代理店に任せるのとは異なり、ウェブ広告の運用担当者が運用のノウハウを身に着けていけます。このノウハウの蓄積は、企業にとって大きな財産になることでしょう。
ただし、担当者を育成するにはやはりコストと時間がかかります。さらに担当者は本来の業務と同時進行になってしまうので、片手間のウェブ広告運用になってしまいがちです。
ウェブ広告の最適化ポイント②現在のウェブ広告の見直し
現在運用しているウェブ広告について、次の4点を見直していきましょう。
予算
ウェブ広告運用の見直しで最も大切なのが、予算の見直しです。予算配分を効率化しなければ、最適化は叶いません。成果目標から逆算して割り振った予算を、毎月単純に同額配分するのでは機会損失が発生してしまいます。
閑散期と繁忙期を見極めて、予算の配分にもメリハリをつけましょう。さらに月の前後半で予算配分を変えるなど、できるだけ細分化するのがベストです。
ターゲット・配信先
現在のウェブ広告のターゲットや配信先を見直します。認知拡大を目的としているなら、ターゲットは大まかに決め、範囲を広げるようなキーワードのマッチタイプの設定を行います。逆に顕在層を狙うなら、詳細にターゲット層を設定し、キーワードの範囲や内容もコアに絞り込むと有効です。
広告内容
ウェブ広告は、ウェブページの端や脇に表示されることが大半です。また、閲覧者はウェブ広告目当てに当該ページを閲覧しているわけではありません。訴求力の弱いウェブ広告では、クリックすることなく素通りされてしまうでしょう。インパクトのある内容にする必要があるのです。
ただし、インパクトのある広告も、しつこく表示されることで慣れが生じてしまったり、嫌悪感を抱かれてしまったりする可能性もあります。それでは、ブランドイメージが下がってしまうことになりかねません。広告の内容は簡潔にして、動画だけでなくイラストや漫画など手法の異なるいくつものパターンを用意しておくといいでしょう。
LP(ランディングページ)の内容
LP(ランディングページ)とは、ウェブ広告をクリックしたユーザーが初めて訪れるページのことです。LPを閲覧したユーザーというのは、広告に興味を持ちクリックしていることから、かなり商品・サービスへの興味・関心、購入意思が高まっている状態だと言えます。CVを上げるには、このようなユーザーを確実に取り込めるかどうかにかかっています。ファーストビューで心をつかむようなデザインやキャッチ、内容にしましょう。
また、ウェブ広告の内容との相違がないか、LPを読むことで疑問や不安、悩みが解消されると思わせられるかを見直していきます。
LPを見直すには、ABテストが有効です。2種類以上のLPを設け、どのLPが効果的かを検証する方法です。
ウェブ広告の最適化ポイント③ウェブ広告の種類と見直しポイント
ここからは、ウェブ広告の種類ごとに、見直すべきポイントを紹介していきます。
PPC広告(リスティング広告・ディスプレイ広告・SNS広告)
PPC広告とは、「Pay Per Click」の頭文字を取ったもので、「クリック1回ごとに支払う」広告という意味があります。一律にいくらかを支払って行う従来の広告とは異なり、クリックされた分だけ支払えばいいのがPPC広告の特徴です。初期投資が少なくて済みます。PPC広告にはいくつかの種類があります。
PPC広告で最も知られているのは「リスティング広告」でしょう。リスティング広告とは、検索エンジンのサイドや上部に表示されるテキストの広告のことです。検索結果と並んで表示されますが、「広告」のロゴが入ります。見直すべきポイントは、キーワードが適切かどうか、マッチタイプの範囲が目的と合っているかどうかです。
「ディスプレイ広告」も、PPC広告の1つになります。ウェブサイトやアプリの広告枠に表示される画像や動画、テキストなどの広告のことです。バナー形式が多いので、「バナー広告」とも呼ばれます。ユーザーの検索傾向や興味・関心、配信先サイトの特性などに合わせた内容の広告を表示させられるので、潜在ニーズのある層に効率よくアプローチできます。また、一度自社サイトに訪れたユーザーに対して広告を表示させられるのも大きなメリットです。アクセス開設ツールを活用して、画像やキャッチコピーなどのクリエイティブを定期的に改訂していきましょう。
InstagramやTwitter、LINEやTikTok、Facebookといったプラットフォームに広告を表示するのが「SNS広告」です。各SNSの登録情報に基づいた精度の高いターゲティングができ、認知度を上げたい層、アプローチしたい層にアプローチできるのが大きなメリットです。Twitterなら拡散力、LINEならアクティブユーザーの多さなど、それぞれのSNSで強みや特徴が異なります。KPIに応じたSNSのウェブ広告が選べているのかを再確認しましょう。
テキスト広告
テキスト広告とは、その名の通りテキスト(文字)だけのウェブ広告です。ウェブサイト上の広告枠に画像や動画ではなくキャッチコピーなどのテキストを載せ、LPに誘導するという流れになります。
テキストだけでは広告としてのインパクトや魅力に欠けるのではないかと思われがちですが、キャッチコピーで端的に訴求できて制作費用も安価で済みます。また、画像や動画などの分かりやすい広告に比べて、広告だと気づかずクリックするユーザーも多くいるほどです。定期的に検索ワードを確認したり、ABテストでコンバーション数やクリック率を確認したりし、広告文を見直しましょう。
純広告
純広告とは、ウェブサイト上の特定の広告枠を買い取り、広告を掲載する手法です。一例を挙げると、Yahoo!のスタートページ右上の枠は、純広告の枠です。
純広告にはさまざまな種類があり、前述のテキスト広告もその1つとなります。また、動画を再生できたり、マウスオーバーでアクションが起こせたりできる「リッチ広告」、テキストと画像を組み合わせた「バナー広告」、CMのような動画を流せる「動画広告」なども、純広告の枠に掲載されているものは全て「純広告」だと言えます。
純広告は、とくに人目に付きやすい位置や大きなサイズではかなり費用が掛かります。ただし、万人に広くPRする力は絶大です。アクセス解析を定期的に行って、商品購入までに離脱ポイントがないか、LPに誘導されたユーザーがどのような動きをするのかなどを定期的にチェックしましょう。
リスティング広告の最適化とは?
ここからは、リスティング広告の最適化についてお話していきます。「リスティング広告の最適化」とは、広告出稿費を抑えつつ、広告としての質を高めてKPI(重要業績評価指標)を実現することです。
ウェブ広告を上位表示させるには、より多くの広告料を支払う必要があります。ところがリスティング広告の場合は、「金額」に「品質スコア」を掛け合わせた「広告ランク」が掲載順位やクリック単価の決定基準となるのです。そのため、無駄なクリックを減らす、広告のクリック率を改善するなどして最適化を図ることが必要不可欠になります。
キーワードの最適化
無駄なクリックを増やしてしまったり、逆にピンポイントにターゲットを絞り過ぎてしまったりしているのを改善するには、マッチタイプを見直しましょう。リスティング広告におけるマッチタイプは、「部分一致」「絞り込み部分一致」「フレーズ一致」「完全一致」の4種類あります。
たとえば、検索需要の多いキーワード群に「部分一致」を設定してしまっていると、関連性が低いワードばかり拾ってしまうことになりかねません。マッチタイプの設定は大変難易度が高いので、まずは「部分一致」に設定して適宜調整をしていくと機会損失が少なくて済むでしょう。
広告文の最適化
画像や動画ではなくテキストが表示されるリスティング広告においては、広告文が全てです。初期設定のままにしておかず、競合他社と比較したりクリック率を確認したりしながら、定期的に変更していきましょう。
リンク先の最適化
何パターンかある広告をクリックすると全て1つのLPにたどり着くような場合は、リンク先であるLPに工夫が必要です。検索したキーワードによってLPを変えて最適化を図りましょう。ABテストで、よりCVRの高い方を選ぶのも有効です。
リスティング広告の広告文の作り方とは?
ここからは、リスティング広告における広告文の作り方について、ポイントを6点紹介します。ポイントさえ押さえれば、広告文を広告代理店に任せず自作することも十分可能です。
検索ワードを盛り込む
広告文に検索ワードを含めることで、検索順位を決定づける「品質スコア」を上げられます。さらに文章の前半に盛り込むことで、ユーザーは検索した結果とより関連性の高い広告だと認識します。
数字を盛り込む
「実績」や「割引率」など、具体的な数字を提示することで説得力を持たせられます。
「期間限定」などの限定訴求をする
「希少性・限定性の原理」と呼ばれる心理学の手法を用います。「本日限定」や「残り〇点」など時間や数量が限定されている広告文を掲載すれば、「早く購入しなければ」という心理が働くものです。
行動喚起を促す広告文
「今すぐ購入」「お問い合わせはこちらから」「資料請求はこちら」など、ユーザーの行動を喚起するような1文があると、問い合わせや資料請求というアクションにつなげやすくなります。
ターゲット層の明確化
幅広い層に訴えかけることで成果を上げられる時代は終わり、ユーザーの興味や趣味・思考が多様な時代となりました。ペルソナ(ターゲット像)を明確に設定した上で、広告文を作りましょう。
ユーザーの不安を払拭する内容
実物を確かめられないネットでのショッピングは広く浸透したものの、まだまだ不安なものです。無料トライアルや返金保証など、不安を払しょくできるサービスがあったら、ぜひ広告文に入れましょう。
まとめ
ウェブ広告を打ち出したものの、思ったような成果が得られない、クリックする人が増えないなどと悩みを抱える担当者は多いものです。ウェブ広告は出して終わりではありません。定期的に見直し、運用して最適化する必要があります。時にはウェブ広告の種類自体を見直すことも必要でしょう。インハウスで行うのが大変なら、広告代理店に外注するのも一案です。
ターゲットに過不足なく伝わる魅力的なウェブ広告にできれば、CVは飛躍的にアップすることでしょう。