近年、「サブスク」や「定額制」のサービスが広く浸透していることはご存知でしょうか。音楽のサブスクや洋服レンタルのサブスク、動画のサブスクなど多彩なサブスクサービスがあり、整体院でもサブスクを取り入れることは可能なのです。
今回はそんな「サブスク整体」について、定額制との違いや、導入するメリットやデメリットなどについて詳しく解説します。
サブスクとは?定額制との違いとは?
まずは、近年よく聞かれる「サブスク」とはどのようなものなのかを解説していきます。また、サブスクと同義で使われることが多い「定額制」との違いについても詳しく説明しましょう。
サブスクとは?
サブスクとは「サブスクリプション」の略称です。現代は、「モノ」を「所有」する時代から「利用」する時代に移行したと言われています。
かつてはモノを所有することにステイタスを感じていたものですが、現在は所有することではなく利用することに価値を置き、お金を使うことが賢い選択だとされています。たとえば自動車はかつて所有することがステイタスだったものの、現在ではカーシェアリングが広まっているのはご存知でしょう。音楽も、CDを所有するのではなく配信で聞けばよいという考えが主流になりつつあります。
そのような価値観の変容の中で生まれたのが、「サブスク」なのです。具体的には、ユーザーが定額料金を支払い商品・サービスを利用する仕組みのことです。
定額制との違いとは?
ユーザーが定額料金を支払えば商品・サービスを利用できるのが「サブスク」でしたが、同じような意味で使われる「定額制」との違いはあるのでしょうか。定額制も、毎月ユーザーが一定料金を支払って商品・サービスを利用する仕組みで、サブスクと同義で使われることの多い言葉です。
ところが厳密には、サブスクと定額制が異なるのはご存知でしょうか。サブスクと定額制が同じ意味なら、たとえば毎月定額を支払い届けてもらう新聞もサブスクということになってしまいます。
サブスクが定額制と異なるのは、「顧客の満足度を意識したサービス」である点です。たとえば定額制である新聞を提供する販売業者は、顧客の住所や契約年などは把握しているものの、顧客が新聞を読むシチュエーションや順序、回数や時間帯までは把握してはいないでしょう。
これがもしもサブスクだとしたら、どうなるでしょうか。まずは顧客が新聞をどのような順序で読んでいるのか、家族のだれがどのように読んでいるのか、読み終わった新聞をどのように扱っているのかなどを調べます。そして、顧客に応じた紙面の順序に変更したり、よく読む紙面をピックアップしたり、読み終えた新聞の収集サービスを行ったりすることが考えられるでしょう。サブスクは、単に月々の料金を定額制にするのではなく、顧客目線に立ったサービスを定額制で提供していくサービスだという点で定額制とは厳密に異なるのです。
サブスクが導入されている業種とは?
音楽配信サービスや書籍読み放題サービスは知名度の高いサブスクでしょう。その他にも洋服レンタルのサブスク、家具レンタルのサブスクも登場しています。1つのジャンルに絞ったサブスクのみならず、動画や書籍、音楽やショッピングなどを月々定額で提供するAmazon Primeのような例もあります。
サブスク整体とは?
一般的に整体は、施術を受けるたびに料金を支払うシステムが取られています。一方でサブスク整体とは、月単位で一定額を支払うことで整体の施術を決められた回数まで受けられるサービスを指します。
整体院によって施術のメニューは異なるものの、全身整体やストレッチ、美容整体などの豊富なメニューがあり、自分が抱えている悩みに応じた施術を自由に組み合わせられるものが主流です。
サブスク整体は、施術を受けるたびに料金を支払うよりも1回分の料金が安価になるため、定期的に整体に通おうと思っている顧客にとってお得なサービスだと言えます。
整体にサブスクを導入するメリットとは?
整体院がサブスクを導入することに、どのようなメリットがあるのでしょうか。導入前に押さえておきたい、整体院がサブスクを導入するメリットについてお話していきます。
安定した収益が得られる
整体院でサブスクを導入した場合、毎月顧客から複数回分の施術料金が確実に受け取れます。サブスクの料金は、1回ごとに料金をもらうよりも儲けとしては少なくなるかもしれません。それでも複数回分のまとまった額が確実に確保できるのは、経営者にとっては大きなメリットだと言えるでしょう。
また、サブスクの利用者数を増やせば、さらに安定した利益を見込めるようになるでしょう。もともと定期的に通院していた顧客も、サブスクにすることで通院頻度が上がる可能性も考えられるほか、サブスクの精度を導入していることが決め手となって通院し始める顧客も見込まれるのです。
継続率が高い
一度サブスク制度を利用し始めた顧客は、よほどのことが無い限り数か月にわたって利用を継続する人が大多数です。顧客が満足感を得られるサブスクならなおさら、継続率は高くなるでしょう。安定的で継続的な収入を得るのに、顧客の継続率の高さは非常に重要なメリットだと言えます。
効果を実感してもらいやすい
サブスクに加入した顧客は、1回ごとに予約し施術料金を支払うのに比べて通院頻度が高くなる傾向にあります。体の気になる部位の施術をしっかり継続して受けることで、施術の効果を実感してもらいやすくなります。効果を実感してもらいやすくなることで、医院やスタッフへの信頼感が増すことも大いにあるでしょう。
整体にサブスクを導入するデメリットとは?
整体院がサブスクを導入する際には、メリットがある半面デメリットもあることを理解しておく必要があります。ここでは、整体にサブスクを導入するデメリットについて2つ紹介していきます。
通常の予約が取りにくくなる
サブスク導入で顧客が増えたり来院数が増えたりすることは喜ばしいものの、予約枠が埋まってしまうことでサブスクを利用していない顧客の予約が取りにくくなることもあるでしょう。また、サブスクの予約タイミングが多く重なってしまう恐れもあります。
とくに平日夕方以降の時間帯は仕事終わりの顧客、土日は仕事が休みの顧客が多く、予約が集中してしまうことが予想されます。予約が思うように取れないと顧客離れのきっかけになってしまうかもしれません。通常予約の顧客用・新規顧客用に予約枠を空けておくなどの対策を講じた上で、サブスクを導入する必要があるでしょう。
事務作業が増える
サブスクを導入するにあたっての検討事項や事務作業、そして継続するための事務作業や管理内容が増えることはデメリットだと言えます。
1回ごとに施術費用を処理するに事務作業はスムーズですが、サブスクにすることで顧客1人1人に対して「期限内で施術可能な回数はあとどれくらいか」「回数券の有効期限内に通院が収まっているか」などをチェックする作業が発生します。
サブスクのコースを複数用意した場合は、その分事務作業も増えることは導入前によく検討する必要があるでしょう。
整体にサブスクを導入する際の注意点とは?
整体院でサブスクを導入しようと検討している場合、次のような注意点を把握したうえで運用するようにしましょう。
無理にすすめない
サブスクは整体院側にとっても顧客にとってもメリットが大きい分、つい強く勧めてしまいがちです。こちら側にそのつもりがなくても、結果として顧客にとっては押し売りのように感じてしまう結果になりかねないので注意しましょう。押し売りが嫌われて信用がなくなると、かえって利益が下がる恐れがあるのです。
納得してもらったうえで開始する
サブスクの制度やメリットについて十分説明し、納得してもらったうえで開始することも重要です。万が一顧客が迷っていたら、その場で決めなくてもいいことを伝える姿勢も大切です。
無理強いされて加入したという思いがあっては、継続した来院は見込めません。顧客自身が納得して加入することで、信頼関係を築けるはずです。
サブスク整体を成功させるポイントとは?
サブスクを整体院で導入したものの、うまく軌道に乗らない、利用する顧客が少ない、運営がうまくいかないなどといったトラブルも考えられます。ここからは、サブスク整体を成功させるポイントについて紹介していきます。
自院のコンセプトとサブスクモデルを合致させる
サブスクを導入するにあたって、またはサブスクのコースを検討するに当たって、自院のコンセプトと合っているかを考えましょう。
たとえば、富裕層をターゲットに単価の高い施術を行う整体院が、リーズナブルさやお得さを前面に押し出したサブスクを提供しはじめると、リッチな気分を求めて来院していた常連客はがっかりしてしまうかもしれません。
管理が難しければ便利な管理ツールを利用する
サブスクを導入すると、顧客ごとの管理が煩雑になります。また、予約の管理も難しくなるでしょう。そこで人為的なミスをしてしまい顧客に迷惑をかけてしまっては、顧客離れにつながりかねません。
顧客との信頼関係を損なわないためにも、予約やサブスクの管理は確実に行う必要があるのです。それでも管理がどうしても難しい場合には、管理ツールを導入するのがいいでしょう。そのようなサブスクの管理ツールについては、後の章で詳しく解説します。
顧客のニーズに合ったサブスクプランを提案する
サブスクは単なる定額制ではなく、顧客のニーズに合ったサービスを提供することに意味があります。整体院のサブスクも、顧客のニーズに合ったプランを提案していくことが顧客の満足感につながります。
具体的には、顧客が希望する予算や通院頻度、解消したい体の不調などを想定して、どのプランを導入したらニーズに沿えるかを考えてプランを制作する必要があるでしょう。また、サブスクプランを複数用意する際には、1人1人の顧客に合ったプランを提案できるよう、顧客のニーズをしっかりヒアリングしましょう。
サブスク整体のプラン案にはどのようなものがある?
一口にサブスク整体と言っても、プランにはいくつかのバリエーションが考えられます。自院に合ったプランを検討してみましょう。複数のプランを導入するのも一つの手だと言えます。
通い放題プラン
一定額を支払えば月に何度も通えるサブスクプランです。月額の料金をやや高めに設定すれば、顧客側でも何回以上通うとお得か計算でき、通院頻度も高まることが期待できます。
新規顧客はまずは1度ずつの予約で様子を見ないと、いきなりまとまった額を支払うのは抵抗があるはずなので、通い放題プランはすでに来院歴のある人向けプランだと言えるでしょう。
たとえば1回5,000円の施術に対して「月額3万円で通い放題」のサブスクプランを設定すれば、顧客は月6回以上通院すればお得になる計算になります。来院回数が増えただけお得感が得られるので、体の不調を強く感じている顧客におすすめするといいでしょう。
回数券プラン
一定の費用で整体院の定める回数だけ通院できる回数券を購入するサブスクプランです。たとえば1回5,000円で施術を行っている整体院で、施術5回分の回数券を2万円で販売すれば、顧客にとっては1回分お得になります。継続して来院する予定なら、1回ずつ会計するより回数券の方がお得になるため、お試しで数回来院して様子を見たい顧客におすすめするといいでしょう。
回数券プランで注意したいのが、有効期限を定める必要があることです。有効期限が無ければ、顧客の来院頻度を上げる効果はないからです。
回数制限プラン
回数制限プランは、1ヶ月に何回まで通院できるのか制限を定めたサブスクプランです。たとえば1回5,000円の施術を行っている整体院が、「月額2万円で最大6回まで通える」という回数制限プランを設定したとします。最大回数である6回通ったとすれば1回の治療が約3,333円となり、お得感を大きく感じてもらえることでしょう。
会員プラン
事前に一定の会員費用を徴収することで、1回の治療費用が「会員価格」でお得に受けられるサブスクプランです。たとえば月額5,000円の会費を支払えば、1回5,000円の施術が3,500円になるプランだとします。このプランの会員が月に8回来院したら、通常4万円のところ3万3千円になり7,000円のお得になるというわけです。
すでに通院によって効果を実感してくれている顧客、信頼関係が築けている顧客におすすめするのがおすすめです。
サブスク管理ツールの活用事例
サブスクを整体で導入する際に問題となるのが、サブスクや顧客の管理です。事務作業や管理ができる管理ツールを導入すれば、次のような活用方法が考えられます。
回数券
回数券のプランを導入するに当たって、回数券を印刷して用意する必要があると思われがちですが、管理ツールを導入すればその必要がないのはご存知でしょうか。
現在大部分の顧客はスマホを所有しているので、スマホ上で回数券を提示してもらえば利用できるようになるのです。整体院側では回数券を紙ベースで用意する必要がなくなると同時に、顧客側も紙の回数券を失くしたり忘れたりすることが無くなり利便性を感じられるでしょう。
サブスクの管理
月次・日次のサブスクの販売実績や利用実績が確認できます。サブスクを利用している顧客の属性(年齢・性別など)や入退会の実績などもレポートにまとめることも可能です。
どのような客層にどのようなサブスクプランが人気なのか、自社に見合わないサブスクプランではないかといったことを検討するのに便利でしょう。
顧客管理
顧客1人1人が今月何度来院したのか、あと何回来院できるのか、今月の支払いをしているのかといった顧客管理も可能です。顧客自身も自分がどれだけ利用し、後どれだけ利用できるのかをチェックできるので、安心でしょう。
募集人数の管理
予約が集中して利用したくてもできない状況が続いてしまっては、顧客に不信感を与えてしまって顧客離れにつながる恐れがあります。募集人数に制限を設けて販売し、定員に達したことが知らせてもらえる管理ツールを利用すれば安心でしょう。
複数のサブスクプランを設けている場合は、プランによって制限を設ける・多めの人数に設定する・少なめの人数に設定するなども可能です。
まとめ
整体院でサブスクを導入することで安定した収入が見込めるようになり、顧客の利用頻度も上がることで収入アップも期待できます。継続して通院することで顧客としてもお得になり、体の不調を解消できたと実感が持てるようになることでしょう。整体院側と顧客の信頼感もアップできるのが、サブスクの大きなメリットです。
一方で管理がうまくいかないと顧客離れやトラブルの原因となりかねず、売り上げの減少につながる恐れがあります。サブスクの特色は、顧客目線でのサービスを一定額で提供することにあります。顧客の求めるものを考えた上で、サブスクのプランを検討することが大切でしょう。