会社で新しい人材を採用したいと思っていませんか?ここで問題になるのが、新卒採用と中途採用のどちらにターゲットを絞るかという点です。新卒採用に力を入れている企業も少なくありませんが、企業によっては中途採用の方がむしろおすすめという事例もあります。ここでは新卒採用と中途採用のそれぞれメリットとデメリットについて解説します。自分達の場合、どちらが向いているかの参考にしてください。
新卒採用を行うメリット
各企業がコストをある程度かけてでも、新卒採用に力を入れています。新卒採用に力を入れているのは、新卒にしかない魅力があるからです。具体的にどのようなメリットがあるのか、主な項目を以下でピックアップしました。
選択肢が広い
新卒の大きな魅力として、選択肢の幅の広さが挙げられます。例年約45万人程度の人材が採用マーケットに出てくるといわれています。これだけの人材が供給されれば、各社希望する人材に巡り合える可能性が高いわけです。将来幹部候補になるような優秀な人材が見つかるかもしれません。
コストがかからない
中途採用と比較すると、コストがかからないのも企業にとっては魅力的でしょう。中途と新卒を比較すると、一人当たりにかかるコストが10万円ほど新卒の方が安いといわれています。中途採用の場合、人材紹介サービスを利用している企業も多いでしょう。人材紹介サービスの場合、エージェントに理論年収の35%程度を報酬として支払うのが一般的です。その分余計なコストがかかってしまいます。
既存人材の刺激になる
新卒を採用することで、すでに勤務している従業員のレベルアップが期待できるのもメリットの一つです。新卒の存在そのものが、既存社員の「負けられない」というモチベーション向上につながるからです。また右も左もわからない新卒には、教育係がつくでしょう。教育係になる先輩社員の指導力が向上します。また新卒を部下に持った上司のマネジメントスキルの向上も期待できます。このように既存社員の底上げ効果が期待できるのも、新卒採用をする理由の一つです。
企業文化を継承してもらえる
新卒はまだ職歴がない、まっさらな状態で入社します。このため、何色にも染められるわけです。一方各企業にそれぞれの色があります。これを企業風土や企業文化といいます。新卒の場合、何も知らない分企業文化を受け入れやすい傾向があり、これもメリットの一つです。
中途採用の場合、すでに前の職場のやり方や文化が身についています。このため転職先企業の文化に、人によってはなかなか染まりにくいかもしれません。結果的に職場で浮いた存在になる恐れがあります。
知名度アップが期待できる
新卒マーケットは採用市場の中でも、最も大きな規模を誇ります。そこに参入することで、企業アピールにつなげられるのもメリットの一つです。求職者は採用を勝ち取るために、企業研究をしっかり行います。たとえ今回縁がなかったとしても、会社について理解してもらえるでしょう。
年齢のバランスがとりやすい
定期的に新卒採用を進めることで、従業員の年齢層のバランスが取れるのもメリットの一つです。一定の若者を採用できるので、平均年齢を下げられます。また定期的に新卒採用すれば、いろいろな年代の社員が一定数いる構造になります。
年代ごとに価値観や視点が異なるのは致し方ないことです。異なる価値観や視点を有する人材がいれば、時代の変化にも柔軟に対応できるでしょう。また年齢層がばらついていれば、定年に伴い大量の人材が職場からいなくなるような事態も回避できます。
新卒採用のデメリット
新卒採用はメリットもありますが、デメリットもいくつかあります。具体的にどのようなデメリットがあるかも把握したうえで、どのように採用を進めていくのか検討する必要があります。
戦力になるまでに時間がかかる
実務経験のない新卒が、一人前になるまでにはどうしても時間がかかるのはデメリットです。社会人の基本的なマナーから始まり、職種ごとの業務のやり方まで教育する必要があります。戦力になるまでに半年から1年くらい時間がかかると思ってください。
戦力になるまでの間も、採用した以上給料を支払わないといけません。つまり採用初期はそれなりにコストがかかります。育成コストをどの程度工面できるか、採用前にシミュレーションしておいた方がいいでしょう。
採用までに時間がかかる
新卒の場合、募集をかけてから入社してもらうまでに時間がかかります。新卒の場合、約1年かけて採用活動を進めなければなりません。しかも内定から入社までに半年程度の期間が空きます。この間に内定者に対するフォローを進めていかないといけません。採用担当者の負担が大きくなるので、注意が必要です。
ミスマッチのリスク
新卒採用の場合、これまで実務経験がありません。社会人になることへのイメージもあいまいではっきりしません。また自分の適性についても正しく把握できていないでしょう。どうしてもミスマッチの起きるリスクがある点に留意しなければなりません。
新卒の場合、就労に関する情報はあまり持ち合わせていないことを意識してください。そこで入社してから「こんなはずでは…」と思わせないために、企業側から積極的に情報発信する必要があります。
景気に左右される
新卒市場は、その時々の景気に左右される傾向のあることは頭に入れておかないといけません。景気が良ければ、新卒者からすると売り手市場になります。新卒者は選択肢が広がるので、知名度が高く安定性のある大企業への就職を希望します。一方中小企業は見向きもされず、人材確保に苦戦する可能性があるので注意してください。
中途採用のメリット
すでに別の職場で実務経験を有している人相手に募集をかけるのが、中途採用です。終身雇用が崩壊しつつある現在は、転職を希望する人も増えてきています。中途採用を行うことによって、以下で紹介するようなメリットが期待できます。
即戦力を獲得できる
中途採用のメリットとして大きいのは、即戦力を確保できる点です。特定の実践的なスキルを有しているので、職場に慣れれば教育を施さなくても即戦力として活躍できるでしょう。
また中途採用者の中には、同業他社で勤務していた人も少なくありません。この場合、前の職場でマスターしたスキルやノウハウが得られます。これも中途採用のメリットの一つです。自社にはないスキルやノウハウを獲得できれば、企業としての戦力も向上するからです。
研修の必要がない
中途採用者はすでに業務するために必要な知識やスキルが身についています。ということは新卒のように、研修にそれほど手間暇をかける必要がありません。自社のやり方について簡単にレクチャーすれば、仕事はできるでしょう。研修にそれほどコストがかけられないというのであれば、中途採用を基本にして募集した方がいいでしょう。
採用に時間がかからない
新卒採用の場合、何段階も時間をかけて採用活動を進めなければなりません。会社説明会に始まって、何度も採用試験や面接をして内定を出します。しかし中途採用の場合、内定まで時間をかけずに済むのもメリットの一つです。
たとえば人材紹介サービスを利用すれば、コンタクトを取ってから内定まで早ければ1カ月程度で完了するかもしれません。1年間程度時間をかけて入社してもらう新卒とは大きな違いといえます。急な欠員が発生して、今すぐ補充したければ中途採用はおすすめです。
中途採用のデメリット
新卒採用同様、中途採用も一長一短なところがあります。中途採用の主なデメリットについて紹介しますので、採用の前に頭に入れておきましょう。
会社の方針と合わない可能性
中途採用者はすでに実務経験があって、前の職場のやり方や仕事への価値観が体に染みついている可能性があります。もし自分のやり方に執着するような人だと、自社の方針に合わなかったり、職場になじめなかったりする可能性があります。多少経験があるために業務がスムーズに進まなくなり商品の質が低下したり、作業効率が下がったりする恐れもあるので注意してください。
定着しない恐れ
中途採用者はすでに転職経験があります。ということは自社に入社した後で、また転職する可能性も十分考えるわけです。もし定着せずにすぐに転職されると、せっかく採用してもその労力がほぼ無駄になってしまう恐れがあります。
たとえば職場になじめなかったり、会社のやり方が合わなかったりするとすぐに次の転職先を探す人も出てくるでしょう。また優秀な人材の場合、ヘッドハンティングされる可能性もあります。こちらよりも良い条件を提示されれば、そちらに移ってしまう恐れもあります。
とくに数多く転職経験のある人は要注意です。入社してもすぐに退職する危険性があるので、定着して仕事をする気があるのか慎重に見極めなければなりません。
ミスマッチの可能性
中途採用の場合、すでに実務経験を有しているので即戦力として活躍してくれるでしょう。しかしミスマッチが起こらない保証もありません。万が一ミスマッチが発生した場合、会社の受けるダメージはかなり大きなものとなると思ってください。
ミスマッチが発生しても、中途採用の場合は再教育している時間的余裕はないでしょう。しかも実務経験があるので、新卒と比較すると給与水準も高くなりがちです。会社としてみればコストが大きい割には、それに見合った活躍をしてもらえない形になってしまいます。
新卒採用向きの企業とは?
新卒採用と中途採用にはそれぞれメリットデメリットがあります。一概に「こちらの方が良い」とは言い切れません。人材にどのようなものを求めるのかによって、どちらが良いかは違ってきます。まずは新卒採用向きのケースについて紹介するので、参考にしてください。
企業文化を定着させたい
企業文化を醸成させ、職場に定着しようと思っているのであれば新卒採用向きといえます。ベンチャー企業のような、これから企業経営を軌道に乗せていきたいと思っている会社などが挙げられるでしょう。
中途採用の場合、前の職場の企業文化や体質が染みついている可能性があります。それまでの職場のやり方で仕事を進めようとする傾向があるので、企業文化の定着には不向きです。新卒は実務経験がないので、企業文化に染まりやすい傾向が見られます。職場の雰囲気にも溶け込みやすいでしょう。
社員の成長意欲を高めたいと思っている
社員の成長意欲を重視している企業も、新卒採用向きといえます。新卒採用の方は「できるだけ早く一人前の社会人になって活躍したい」と、高いモチベーションを持っています。成長意欲がほかの社員にも波及して、社員のモチベーション向上が期待できるからです。組織の活性化を求めているのであれば、新卒を積極的に採用してください。
事業規模を拡大したい
既存事業の規模を拡大したければ、新卒採用がおすすめです。既存のものなので、ビジネスモデルなども確立されているでしょう。やり方が確立されているのであれば、新卒でも吸収力があるのですぐに仕事をマスターできます。またやり方を知っている先輩社員がいるので、彼らが教育係を務めれば、新卒でも比較的早い段階で一人前に成長するでしょう。
希少人材を確保したい
特殊な職種の人材を確保したければ、新卒採用で確保しましょう。特殊な職種の場合、中途採用市場で探してもなかなか該当する人物が見つからない可能性があるからです。ただし新卒なので、即戦力は期待できません。自社で時間をかけて育成する必要がある点は、あらかじめ理解しておきましょう。
中途採用向きの企業とは?
中途採用を推し進めた方が、会社にとってプラスになるケースもあります。どのようなケースだと中途採用向けなのか、主要なポイントについて以下で見ていきましょう。自分達に該当するものが多ければ、新卒ではなくむしろ中途採用の方がおすすめです。
即戦力が必要
急に欠員ができて、人材を補填する必要がある場合、中途採用の方がいいでしょう。欠員の補充であれば、即戦力になる人材を求めるからです。新卒の場合、社会人としての基本的なマナーから業務のやり方、実践的なスキルなど色々と教える必要があります。一人前になるまでに少なくても数ヶ月から1年程度の月日が必要です。
中途採用者の場合、少なくても基本的なビジネスマナーが身に付いているでしょう。またキャリアによっては、専門性の高い知識やスキルを持っているかもしれません。研修などしなくても、すぐに現場で活躍してくれるでしょう。
事業拡大を目指している
会社によっては企業競争力を高めるために、事業拡大を目指しているところもあるでしょう。この場合、新卒ではなく中途採用に力を入れるべきです。とくに新規事業を立ち上げる他社との差別化を図るためには、高い専門性が要求されます。ある程度のキャリアを有している人物の中から中途採用で確保する必要があるわけです。
また中途採用者を獲得することで、自社にはないノウハウを持ち込んでもらえます。これも企業競争力を高めるうえでプラスです。中途採用はお金がかかるものの、コストをかけてでも優秀な人材を獲得するのがおすすめです。
資金的な余裕がない
資金的な余裕がない、でも新規人材を確保したいと思っているのであれば、中途採用を進めた方がいいでしょう。新卒採用の場合、すぐには戦力になりません。研修をして業務するために必要な知識やスキルを学ばせる必要があります。
しかし資金的な余裕がなければ、そのような先行投資はできないでしょう。新卒教育にかかわる損失を吸収できるだけの資金がなければ、まずは中途採用を優先させるべきです。優秀な人材を確保して経営基盤がしっかりしたところで、新卒に目を向けてみるのが基本的な戦略になるでしょう。
組織改革を進めたい
組織を刷新したいと思っているのであれば、中途採用を検討した方がいいでしょう。組織改革を進めるためには、組織を引っ張るリーダー的役割の人が必要です。そうなると管理職経験のある人を中途採用で確保しなければなりません。
また自社にはないスキルを持った人材対象に中途採用で確保するのも一考です。新しいスキルを会社に持ち込むことによって、社内の雰囲気もリフレッシュされる可能性があるからです。
まとめ
新卒採用と中途採用、それぞれにメリットとデメリットがあります。どちらで人材を確保すべきかは、会社の置かれている状況やどのような人材を獲得したいかで使い分けましょう。実務経験がない新卒の場合は、教育も必要ですが若いのでポテンシャルがあります。一方で中途採用の場合は、すでに実務経験があるので即戦力が欲しい場合にはおすすめです。
採用活動を進める際には、どのような人材が必要なのかじっくり検討することです。そのうえで自分たちのケースでは新卒採用と中途採用どちらがいいか、しっかり見極めてください。