かつて車といえば、現金またはローンで購入して自分で所有することが一種のステイタスでした。ところが近年では、車を利用するためのさまざまなサービスが登場しており、賢く利用している人が増えているのはご存知でしょうか。
今回はそのようなサービスの中でもとくに人気を集める注目のサービス、「マイカーリース」について紹介します。マイカーリースの需要増大の要因や、マイカーリースを利用するメリット・デメリットについて解説していきましょう。
マイカーリースの仕組みとは?
そもそも、マイカーリースとはどのようなサービスなのかわからない人もいるかもしれません。そこでまず、マイカーリースの基本的な仕組みについて説明していきましょう。
マイカーリースとは?
マイカーリースとは、リース会社の所有する車を月額制で車を貸し出してもらうサービスです。契約者は自分の希望する車の車種やオプション、グレードなどをリース会社に伝えれば用意してもらえ、希望の期間は自分だけの車として自由に乗ることが可能です。福祉車両や特別仕様車を用意しているリース会社もあるでしょう。
マイカーリースの料金の仕組みとは?
一般的に車を所有するには、車体本体を購入して税金や自賠責保険料、手数料などの初期費用が掛かります。さらに自動車を維持していくには、車検費用や税金、点検費用や修理費用などが不定期に必要となるのは避けられません。
一方でマイカーリースの場合は、毎月の定額料金のみを支払うだけでそれ以上の出費はありません。なぜそのようなことが叶うのでしょうか。車を購入する場合、一般的には車両本体価格を全額支払う必要があります。ところがマイカーリースの場合は、まず契約期間をもとにして算出した契約満了時の残価を車両本体価格から差し引きます。
そしてその残りの金額を使用期間で月割りした額が、毎月の車両本体価格の支払額となるわけです。この仕組みは「残価設定」といわれるので、聞いたことのある人も多いのではないでしょうか。
また、マイカーリースの月々の利用料金は、残価設定で算出された車両本体価格のほかに以下の保険料や税金、各種手数料などが含まれます。これらすべてを月割りで支払うことになります。
保険料・税金
・自賠責保険料
・自動車税
・重量税
・環境性能割
各種手数料
・仲介手数料
・登録費用
・お客様サポート料
・その他諸費用
今さら聞けない!似ているサービスとの違いを解説
車といえばかつては購入するかレンタカーを借りるかしなければ、利用することのできなかったものです。ところが近年、マイカーリースをはじめ新たなサービスが続々と誕生しています。
ただ、新しいサービスは名称や内容が似ていることもあり、区別のつかない人も多いのではないでしょうか。そこでここでは、車を利用できるサービスについて、マイカーリースとの違いを解説していきましょう。
カーシェアリングの違いとは?
カーシェアリングとは、必要な時に数時間単位で車が借りられる仕組みを指します。ただし「シェア」という名前の通り、会員登録を行った複数人で1台の車を共同使用するため、使用したい時間にも予約が埋まっていて使えないこともあるでしょう。
一方で、短時間の利用もできて利用料金を抑えられます。ちょっとした外出や用事など、短時間・高頻度で車をリーズナブルに使いたい人に向いているサービスだといえるでしょう。マイカーリースは、リース期間中は自分1人で車を占有できる点がカーシェアリングとは違います。
レンタカーとの違いとは?
レンタカーもカーシェアリング同様に、必要な時のみ数時間・数日間単位で車をレンタルできるサービスです。ただしレンタカーの場合はカーシェアイングとは異なり、複数人で共用するのではなく1台を1名で占有できます。車種が選べるものの、ナンバーは「わ」や「れ」ナンバーに限られるのがマイカーリースとの違いでしょう。レンタカーは乗り逃げを防ぐ目的で、他の車と識別できるよう「わ」または「れ」ナンバーと決められています。
マイカーリースは長期間リース車を借り続けることからレンタカーとは区別されており、ナンバーは「わ」「れ」に限定されていません。
カーローンとの違いとは?
マイカーリースは、残価を差し引いた分の車両本体価格や維持費・税金などを込みにした定額料金の支払いだけなので、支払いの負担を抑えやすい特徴があるでしょう。ただし使用期間が終了した際に、車を自分で所有することはできません。
マイカーリースと残価設定型のカーローンは、混同されがちです。よく似た仕組みではあるものの、マイカーリースなら金利も掛からず、維持費なども定額にできます。ただしカーローンのように車を所有することはできません。
マイカーリース市場の現状と今後の市場予測
かつては「資産」としての側面も大きかった日本では、新車または中古車を購入して自分で所有することが当たり前であり、ステイタスでもありました。ところが近年、「マイカーリース」をはじめ「カーシェアリング」や「レンタカー」など自動車の利用の仕方が多様化するのに伴い、車を所有することにこだわらない価値観をもつ人が増えています。
とくにここ数年は車両本体価格の高騰に伴い新車販売台数の伸び悩む中、マイカーリース契約台数が右肩上がりなのはご存知でしょうか。2012年に個人マイカーリースの契約台数は約11万台、そして2015年には15万台を突破しているのです。さらに2016年には約18万台と、数年間で1.5倍以上の伸び率を見せているというから、驚きでしょう。今後も物価高騰は続くとともに、マイカーリースの需要も増え続けていくことが大いに考えられます。
マイカーリースのメリットとは?
マイカーリースを利用すると、どのようなメリットが得られるのでしょうか。
残価設定による低料金
リース期間の満了時に買い取り相場や走行距離などを想定し、車に残っていると思われる価値を価格にした額が、「残価」です。マイカーリースに当たって支払う車両本体価格は、この残価を車両本体価格から差し引いて、契約した月数で分割した額です。このため、購入するより安くなるというメリットが得られるでしょう。
たとえば車両本体価格が200万円の車の残価が90万円なら、110万円を契約月数で分割していけばいいというわけです。
頭金・登録諸費用が掛からない
車を購入するなら、初期費用として車両本体価格をはじめとしてまとまった資金を用意しなければなりません。頭金は車両価格の10%から20%程度だといわれています。数十万円の頭金や保険料、登録諸費用などを用意せずに、新車に乗れるのは大きなメリットでしょう。貯金のない人、貯金を崩したくない人に最適なサービスだといえます。
維持費も月額料金に含まれる
車は、一度手に入れればお金が掛からないわけではありません。自賠責保険料や自動車税など、定期的に支払わなければなれない出費も数多くあるのはご存知でしょう。車検や法定12か月点検、オイル交換やタイヤのローテーション、ブレーキパッドの交換といったメンテナンスまで実に多くの費用が掛かり、その都度まとまった額を支払わなければなりません。
マイカーリースならそれら税金や保険料、各種手数料やメンテナンス費用はすべてまとめて、月額料金として月々一定額を支払っていけます。つまり、車に必要な費用のほとんどを定額にできるというわけです。まとまった出費に困ることはなくなって、車を維持するために貯金することも必要なくなるでしょう。また、車をもつのが初めての場合、いつ・どれくらいの額の出費が必要なのか予想できず不安ではないでしょうか。その点、マイカーリースなら前もって月々の料金が明確になり安心感も得られるでしょう。
好みの車を選べる
レンタカーやカーシェアの場合、会社側の用意している車の中から自分の条件に合う一台を選んで契約します。その点マイカーリースは、契約者の希望する車を会社側がその都度新車で用意するのはご存知でしょうか。さらに、自分が望む車種はもちろん、グレードやオプションまで選択できるのです。
マイカーリースは残価設定で購入より安く車に乗れるのがメリットであり、購入では手の届かないようなグレードの高い車に乗れる可能性もあるでしょう。リース会社によっては、特別使用車や限定モデルの手配まで行ってくれることもあります。
料金は経費に計上できる
マイカーリースは、個人の利用のみならず車を必要とする法人で乗る用にも向いているのはご存知でしょうか。通常は事業用に購入した車については減価償却対象となり、経費処理に手間が掛かってしまうものです。その点マイカーリースの場合は、そのような面倒な処理の必要がなく、さらに節税効果も高くなるのです。
リース料金にメンテナンス費用や税金なども含まれ費用が一本化されているので、経理の処理を簡素化できるのは、法人としてもメリットが大きいでしょう。
手続きが簡単
車を購入する際、多くの場合は何度も店舗に足を運んで打ち合わせや商談に臨む必要があります。その点マイカーリースは、手続きをネットや郵送で完結できたり、納車も自宅にしてくれたりするリース会社も多いのです。リースが満了する際の手続きも同様で、自宅で済ませられることが多いので、忙しい人にもぴったりでしょう。
さらに各種税金の納入や自賠責保険料の支払い手続きなども、リース会社が行ってくれます。あくまでも車体はリース会社所有のもののためです。納入を忘れてしまうと大変な税金や保険関係の支払いは、忙しい毎日でどうしても心理的負担となってしまうものです。リース会社にすべて任せられるのは、大きなメリットでしょう。
ナンバーが「わ」「れ」以外
レンタカーの場合はナンバーが「わ」または「れ」になりますが、マイカーリースの場合は「わ」「れ」以外のナンバーになります。マイカーリースは中長期間乗り続けることになるため、「わ」や「れ」のナンバーに乗り続けるのは周囲の目が気になるという人も安心です。
乗り換えが簡単
車を一度所有すると、いざ乗り替えたくなったからと廃車にするにしても、中古車として売るにしても、手続きが面倒なことはご存知でしょうか。その点マイカーリースなら、契約満了になったらリース会社へ車を返すだけで済むのです。面倒な手続きなどは一切ありません。もしもそのまま同じ車に乗り続けたければ再リース、違う車種に乗り替えたいなら返却後別の車種をリースするなど、契約満了時にいくつかの選択肢が用意されています。
マイカーリースのデメリットとは?
マイカーリースにはデメリットもあるので、デメリットも知った上で利用するようにしましょう。
原則的に解約・契約内容変更はできない
マイカーリースは原則的に、契約期間途中での解約や契約内容の変更はできません。たとえば10年契約していた車を、4年で解約することはできないのです。必要な期間をあらかじめ検討し、必要に応じた契約期間を選択しましょう。また、1年単位で契約期間の設定できるプランのあるリース会社を選ぶのもおすすめです。
万が一の事故によって廃車になるなどして解約しなければならないケースでも、残金の一括払いや違約金の支払いが求められます。任意の自動車保険に加入しておけば、このような支払いをカバーできるでしょう。
走行距離などの制限がある
マイカーリースは、契約満了時に車を返却することが想定されているサービスです。そして契約時に車の残価を設定して月額料金を設定しているため、返却時の残価を担保する目的で走行距離などに制限が設けられています。走行距離は月間や年間の上限走行距離の設定されていることが多いでしょう。
平均すると1か月500kmから2,000km程度の上限が定められていて、契約満了時に上限をオーバーしていた場合には、超過分の料金を支払わなければなりません。走行距離の上限や超過した場合の追加料金の額はリース会社やプランごとに異なるので、契約前に確認しておきましょう。
またドレスアップやカスタマイズについても制限があり、返却時には元に戻さなければなりません。ただし、契約満了時に車をもらえるプランの場合は原状回復も必要ないので、ドレスアップやカスタマイズも楽しめるでしょう。
残価清算が発生する場合も
マイカーリースは、契約満了時に残価清算の負担が発生することもあります。契約には「オープンエンド」と「クローズエンド」の2種類があるのはご存知でしょうか。「オープンエンド」は契約の満了時に再度実際の車の査定を行い、その査定額で清算を行います。残価設定することで月々の料金は安く抑えられるものの、精算時に支払いの発生するケースのあるのがデメリットでしょう。一方「クローズエンド」は、契約時に残価設定しない代わりに、契約の終了時に市場価値が残価を下回っても差額の請求がありません。ただし、その分月々の支払いは割高になります。
オープンエンドは契約の満了時に支払いが高額になってしまうケースもあります。クローズエンドは月々の支払いが割高ではあるものの、残価清算のない分安心かもしれません。
審査に通る必要がある
マイカーリースの場合、契約期間が数年間と中長期にわたることの多いため、利用に当たって審査があります。収入の不安定な人、過去の債務履歴に不安な点がある人などは、もしかしたら審査に通らないかもしれません。ただし審査基準はリース会社によって異なるので、一社の審査に落ちても、別のリース会社ならリースができることもあるでしょう。
マイカーリースに向いている人・向いていない人
マイカーリースにはメリットとデメリットがあるものの、どのような人に向いているのでしょうか。そして、どのような人には向かないのでしょうか。
マイカーリースに向いている人とは?
マイカーリースに向いている人は、お金を掛けずに新車に乗りたいと考えている人です。また、仕事などで忙しく契約・メンテナンスなどの手間を省きたいと考えている人もマイカーリースがおすすめです。家計管理をわかりやすく行いたい、車やメンテナンスについて詳しくないから任せたいという女性などにもぴったりでしょう。
法人など月々の走行距離の長い人や、自由にドレスアップやカスタマイズを楽しみたい人は、契約満了時に車のもらえるタイプのマイカーリースが向いています。
マイカーリースに向いていない人とは?
新車購入に当たってまとまったお金を支払うのが苦にならない人、転勤など生活環境の変化が定期的にあり中途解約の可能性がある人などは、マイカーリースのメリットを享受しにくいかもしれません。
まとめ
希望の車種に乗れて車の所有・維持に掛かる費用も月々一定額で良い「マイカーリース」は、近年非常に人気を集めるサービスです。利用料金は車体の本体価格から残価を差し引くので、お得に乗れるのもメリットです。ただしデメリットもあるので、納得の上でリースすると良いでしょう。