「おうち時間」や非対面でのやり取りの増加など、コロナ禍を経て人々の消費行動は大きく変容しました。そんな時代を勝ち抜いていくために注目されているのが、「ECサイト」の導入です。ECサイトの国内市場規模は10兆円を突破しており、非常に大きな市場です。
ただし参入するにあたって、そのメリットとデメリットを十分考慮してからでなければ、軌道に乗せることは難しいでしょう。そこでECサイトについての基礎知識やメリット&デメリットを解説していきます。
「ECサイト」とは?
「EC」とは「Electric Commerce」の頭文字を取ったもので、「電子商取引」と訳されます。いわゆるインターネット上での物品の販売サービスのことを総称して「EC」と呼んでいます。
そして、Amazonや楽天などの「ECモール」、メルカリに代表される「フリーマーケットアプリ」やヤフオク!などの「ネットオークション」などのサイトのことを「ECサイト」と呼ぶのです。
年々増加しているECサイトの市場規模
総務省統計局の「ネットショッピング利用世帯の割合の推移」によると、ECを初めて利用した世帯の割合は2020年5月に初めて5割を突破し、とくに55歳~64歳の世帯におけるEC利用が6割近くにまで拡大しています。これは、新型コロナウィルスにおける人々の行動様式の変化によるものでしょう。
そして、ECサイトの国内市場規模は10兆円を超えている一大市場に成長しています。新型コロナウィルスの今後の動向は予測できませんが、ECサイトの利便性を経験した人々は終息後もECサイトを利用し続けることが大いに考えられます。
ECサイトは2種類に分けられる
ECサイトは、次の2種類に分けられます。
「モール型ECサイト」は、Amazonや楽天、Yahoo!ショッピングなどが運営するモールのことです。この形態のECサイトに出店する場合は、運営については任せることができて集客力もモールの恩恵が受けられます。
「自社ECサイト」は、自社で構築・運営するECサイトのことです。オリジナリティのあるECサイトを低予算でも運営できるのが魅力です。
初めてECサイトに参画する企業はモール型ECサイトから始める場合が多いものの、ランニングコストがかかることから「自社ECサイト」に移行することが多い傾向にあります。
現在のトレンドはオムニチャネル型ECサイト
オムニチャネルとは、実店舗とECサイトの垣根を無くして融合させて各々の利点を生かす戦略です。これは近年、実店舗で商品をチェックして実際に購入するのはECサイトで…というような消費行動の変化に対応するものです。
ただし、実店舗とECサイトの在庫の一元化やそれぞれの売り上げ管理など、インフラ整備が必要となります。
ECサイトのメリット
ここからは、ECサイトのメリットを6つお話ししていきます。
非対面での取引が可能
前述したとおり、コロナ禍によって人々の購買動向はECサイトへと大きく転換しています。そしてその流れは今後も続くことが考えられるため、非対面での取引ができるECサイトは拡大を続けていくことでしょう。高齢化社会であることを考えても、自宅に居ながらにして買い物ができるECサイトは今後ますます需要があると考えられます。
実店舗を構えるよりもコストが安い
店舗経営において「物件の立地が8割」と言われるほど立地の良さは重要ですが、立地の良い物件ほど家賃は高額です。
いわば仮想空間における店舗であるECサイトなら、家賃は不要です。実店舗や事務所の立地は売り上げと無関係で、ネット環境さえあれば自宅で開業することもできます。構築・運営にお金はかかるものの、それでも家賃に比べたら大幅に安いランニングコストで運営できます。
家賃だけでなく、実店舗を構えるにあたって必要な人件費も抑えられます。店舗を拡大するのに比例して人件費もかかるものですが、多くの人員を雇うのは経営が傾いた際などのリスクも大きいものです。ECサイトなら、事業が順調でも傾いても人件費が大きく変動することはありません。
注文を24時間いつでも受けられる
実店舗では、営業時間内でしか販売はできません。一方でECサイトは24時間・365日いつでも受注でき、電話対応なども不要なので無人で稼働できます。送料や支払い方法などの情報もサイト上に明記されているので、1件1件説明する必要もありません。
顧客データの分析が簡単にできて対策が立てやすい
WEBページでは、どのページから流入してきたのか、どのページが多く閲覧されているのか、どのページから離脱するのかといった「行動データ」を蓄積できます。また、ECサイトを運営することで購入者のレビューや要望、問い合わせ内容といった「買うことに関するデータ」も蓄積していけます。
それらのデータを分析すれば、顧客が望む情報や要望を把握して商品を改良したり潜在ニーズを掘り起こしたりと売上アップの対策を立てるのに大いに役立ちます。
定期購入やクーポンなどWEBだからこそのサービスが可能
実店舗での顧客へのサービスと言えば、丁寧な接客や定期的なセールなどでしょう。ただし近年では、店員による接客は不要だと考える顧客が多いのも事実です。
ECサイトなら、優良顧客限定のセールや定期購入制度、メールマガジンによる情報発信などのサービスが可能です。初回購入者限定のクーポンや初回割引など、顧客獲得につながるサービスもWEBだからこそ可能になります。
ターゲットを世界に広げられる
人口減少が続く日本においては市場も縮小傾向です。ECサイトの多言語化や海外への発送手段の確保さえ行えば、市場を中国や米国をはじめとした世界中に拡大できるのです。
広告を打ち出すにしても、ポスターを1枚貼っても見てもらえるのは近所に住む限られた人々であるのに対して、WEB上なら不特定多数の人々の目に留まる可能性があります。
ECサイトのデメリット
ECサイトのメリットについてお話してきましたが、デメリットも念頭に入れてから導入することが大切です。
競合が多く価格競争が激しい
ECサイトは日々増加中で、飽和状態とも言われています。競合が多い中で知名度を上げて顧客に選んでもらうには、他社との差別化を図るブランディングが必須です。
また、ECサイトでは顧客がある商品について他店との価格を比較することが容易にできてしまいます。価格比較サイトもあって、価格競争に陥りやすいのが事実です。商品に付加価値をつけるなど、価格以外の面で魅力を打ち出すことが、価格競争を勝ち抜くポイントでしょう。
売上アップのためのノウハウが必要
ECサイトは立ち上げたら終わりではなく、運営していかなければ売上アップは見込めません。クリックされるたびに課金される「ネット広告」を出したりデータの分析や研究をしたりと、テクニックやノウハウも必要になります。その道のプロである専任スタッフを雇うことも可能ですが、その際には人件費もかかってきます。
非対面で商品の魅力を伝えるのが難しい
実店舗でなら手に取って見られる商品も、顧客はECサイト上では画像や動画、サイズ表記などのテキストを頼りにするしかありません。購入後イメージと違ったからと返品する場合には手間や送料などの負担が生じるため、少しでも不安があると消費者はECサイトでの買い物を見送る傾向にあります。
ECサイト特有のコストがかかる
ECサイトを立ち上げてすぐに突き当たる壁と言えば、「知名度」でしょう。知名度を上げるために定期的な広告を配信する費用は定期的にかかります。大手モールに参画するなら知名度の面では苦労しないかもしれませんが、出展料や売り上げに応じたロイヤリティを支払わなければなりません。
まとめ
実店舗を構えるのに比べて少ないコストで世界中に商品の魅力を発信できるのが、ECサイトの強みです。ただしECサイトは増加の一歩であり、「売れるECサイト」にするには他店との差別化を図るための手立てが必要です。ECサイトのメリットやデメリットを念頭に、魅力のあるECサイト作りをしてみましょう。