インターネットが急速に普及した現在では、企業が自社のHPを持つことは当たり前になっています。ところが、元請けから仕事を受注することが多い建設業・工務店の中には、HPを持たない企業も少なくありません。
それでは、建設業・工務店にHPは必要なのでしょうか。また、建設業・工務店におすすめのHPのデザインやHP作成の際のNGポイント、HPデザインの事例などを解説します。
建設業・工務店にHPが必要な理由とは?
インターネットが普及した昨今、老若男女を問わず多くの顧客がサービス・商品を選ぶに当たって情報収集に活用するのが、インターネットです。建設業者を選ぶ際にも、企業のHPや口コミサイトを比較することが考えられるでしょう。
ところが元請けからの受注で仕事がなりたっているような建設業・工務店の場合、自社のHPを持たずに仕事が成り立つ分、HPを持たないケースも少なくありません。そのような建設業・工務店にもHPが必要な理由をお話していきます。
社会的な信用を得るため
たとえば検索サイトで建設業・工務店を検索した際に、HPがあることで信頼が得られるとはなぜでしょうか。
現在、さまざまな業種で詐欺や悪徳業者が横行しているのはご存知でしょう。詐欺・悪徳業者を見抜く方法の1つに「インターネットで実在する業者かどうか検索する」ことが推奨されています。あたかも実在する業者に見せかける詐欺・悪徳業者はHPを持たないので、まっとうな業者かどうかを見極める方法の1つになっているというわけです。
つまりHPを持たない業者は、いくら健全な企業でも信頼されない恐れがあるのです。検索エンジンで検索した際に、企業名がヒットしてHPに会社の概要や仕事内容、顧客の声などが掲載されていることで、ユーザーに信頼され安心感を与えられるのです。
効率よく仕事を獲得するため
インターネットで建設業・工務店を検索する際に、ユーザーは企業名から検索するとは限りません。たとえばリフォームしたいけれど依頼する企業がまだ決まっていない場合には、「リフォーム+地域名」で検索するのではないでしょうか。その際にHPを持たない企業は、検索結果に企業名を連ねられないのです。
元請けからの受注に依存しない新規顧客を得たいなら、HPを持つべきなのが分かるはずです。仕事を獲得する方法はHPだけでなくチラシやポスティング、DMなども考えられますが、費用対効果が高いのはHPだと言われています。
認知度を上げるため
HPを運用していくことで、企業名の認知度アップはもちろん、企業のサービス内容などを認知してもらうメリットも生まれます。
競合他社との差別化を図り独自のブランドイメージを確立するにあたって、まずは自社の認知度アップが必須です。HPがあれば、気になったユーザーがいつでもアクセスでき、企業の実績や概要など必要な情報が得られ、認知度を高められるのです。
人材を獲得するため
求職活動もWebで行う時代になり、就職活動に求人サイトを利用する求職者も少なくありません。企業側も求職サイトに登録していれば応募者を得られるものの、興味を持った求職者は必ずと言っていいほどその企業のHPを見て仕事内容や社風などをチェックするのです。
HPを持たない企業はやはり信頼性に欠けるとともに、求職者に対してアピールすることもできません。自社のHPに経営理念や社員の1日の流れ、待遇など求職者が求めている情報を掲載すれば、入社後のミスマッチも防げることでしょう。
自社のHPに「採用情報」を掲載すれば、求人サイトに登録せずに求職者を募ることも可能になります。建設業は中途採用に掛かる費用が高額だと言われますが、自社のHPで求人できれば、求職サイトへの掲載費が削減可能になります。
建設業・工務店のHPに記載するべき項目とは?
建設業・工務店が自社のHPを作成する場合に、記載するべき項目は次のようなものが挙げられます。
会社紹介
会社の基本情報を掲載することで、信頼を得ることが可能になります。基本情報とは具体的に、次のような内容が考えられます。
・会社名
・代表者・役員名
・設立年月日
・連絡先(電話・メール)
・住所
・営業時間・定休日
・事業内容
これらは、問い合わせをしようと思う顧客が必ずチェックする項目です。とくに営業時間などに変更があった場合は、確実にHPの基本情報も変更するようにしましょう。アクセス情報は、Googleマップを埋め込むのがおすすめです。公共交通機関でのアクセスや目印、駐車場の台数などもよくチェックされています。
理念・コンセプト
自社の理念・コンセプトは、他社に負けない自社の得意な工事など、他社より優れていることがピンポイントで伝わる情報を掲載しましょう。自社に依頼することで得られるメリット、自社の強みや魅力をピンポイントでまとめることは、マーケティングにおいて非常に重要です。
どのような経営者なのかを伝える「代表者の挨拶」では、経営理念を語るとともに、トップとしての情熱や人間性をアピールしましょう。社長の情熱や人間性、経営理念に賛同した求職者を得られることも考えられます。
サービス内容
建設業・工務店のHPなのだから、サービス内容は閲覧者も分かるだろうというのは間違いです。建設会社や工務店を探している人も、求めているサービスはそれぞれ異なります。新築なのかリフォームなのか外壁塗装なのか、自社で行えるサービス内容を明記しましょう。また、次のような項目を記載すれば、他社と比較する際の判断材料になるでしょう。
・提供できるサービス内容
・工事の流れ
・アフターサービスについて
・料金
料金については建設業・工務店の場合高額になることも多いので掲載しない方がいいと考えるかもしれません。ところが料金比較ができないと、ユーザーはHPから離れてしまい比較対象から外されてしまう恐れがあるのです。料金を掲載するのに抵抗がある場合は、受注数が多い人気の施工だけでも目安の金額を掲載するようにしましょう。
工事の流れについても、施工をまだ経験していない消費者にとっては、どのように工事が進むか不安なものです。見積もりや打ち合わせ、工事の目安の長さなど、工事の流れを詳しく載せると、具体的なイメージが掴んでもらいやすくなるでしょう。
施工事例
建設業・工務店のHPを分析すると、多くの閲覧者が施工事例のページを中心に閲覧していることが分かっています。
・地域
・施工の内容
・かかった日数
・お客様の要望
・施工金額
・ビフォーアフターの写真
希望している施工と似たような事例を見つけて、どれくらいの金額や期間がかかるのか、どのような仕上がりになるのかチェックする人が多いのです。視覚的にわかるように、画像を多く載せましょう。
お客様の声
これから施工を依頼しようか考えている人にとって、施工を経験した「お客様の声」はいわば先輩からの経験談です。トラブルや事故がなく、魅力のある施工で自分がかかえる悩みを解決してもらえる会社なのかどうか、第三者の意見から判断できる「お客様の声」は非常に重要だと言えます。
・どのような工事を依頼したか
・自社を選んだ理由
・自社の対応
・施工の満足度
・騒音や粉塵などへの配慮はどうだったか
・任せた乾燥
施工が終わった顧客に対し、上記のような項目のアンケートを取ってHPに掲載しましょう。その際に、文字だけでなく写真も載せられるとより説得力を持たせられます。
採用情報
HPを閲覧するのは、顧客だけではありません。求職者も見るものなので、採用情報を載せるのも効果的です。
・社員の1日のスケジュール
・年次別の仕事内容
・先輩のインタビュー
・待遇
上記のような情報を載せることで求職者が働くイメージを具体的に持てるようになり、マッチング率の高い求職者の応募が期待できるようになります。
お問い合わせ
HPで多くの集客を得たとしても、売り上げに繋げなければ意味がありません。興味を持った人が気軽に問合せできるように、電話番号などの問い合わせ先と受付時間は必ず載せましょう。
「お問い合わせ」「見積フォーム」ボタンがあれば、電話よりもさらに問い合わせへのハードルが下げられます。問い合わせのボタンは分かりやすい場所に設置し、「資料請求」や「モデルハウス訪問」、「見積り」など複数のフォームを用意しておくのもおすすめです。
建設業・工務店のHPでやりがちな4つのNGポイントとは?
建設業・工務店が自社のHPを作成する際に、してしまいがちなNGポイントは次の4つが考えられます。
自社の強みが伝わりにくい
自社の強みを自覚しないまま何となく作ったHPでは、他社との差別化が図れません。何となく万人受けするようなHPでは、結局誰の心にも刺さらないことになりかねないのです。まずは自社の強みを明確にし、その強みを前面に打ち出すHP作りを心掛けましょう。
施工事例が少ない
施工事例は、閲覧者が最も確認する項目だと分かっています。施工事例が少ないと完成や工事の様子のイメージが湧きにくいのはもちろん、実績の少ない建設業・工務店なのではないかという不安を与えてしまうのです。
HPが見づらい
デザインにこだわるあまり、ほしい情報になかなかたどり着かない見づらいHPも散見されます。HP制作にあたり、ユーザー目線に立ったデザイン性や操作性「UI(ユーザーインターフェース)」と、ユーザーがサービスを通じて得られる体験「UX(ユーザーエクスペリエンス)」を意識しましょう。つまり、見やすいデザインですぐほしい情報が手に入る媒体にしていく必要があるのです。
更新されない
HPを持たない建設業・工務店がHPを作ることは、大きな前進です。ただし一度制作したきりでは検索上位に表示されず、閲覧者が増えることはないでしょう。また、全く更新されないHPは、信頼性を持たれない恐れもあります。せっかく制作したHPは、ブログやイベント情報など定期的に更新する必要があります。
建設業・工務店のHPでおすすめのデザインとは?
建設業・工務店のHPは、どのようなデザインにするかで閲覧者に与える印象が大きく異なります。どのようなデザインがおすすめでしょう。
親しみやすさ
「3世代が暮らせる家」「家族の時間が充実するリノベーション」「若いファミリーにも手が届く新築注文住宅」などを手掛ける建設業・工務店なら、親しみやすいHPデザインがぴったりです。
ほっこりしたテイストのイラストや明るい印象の写真などで明るい印象に仕上げましょう。スタッフの顔写真も笑顔の写真にすれば親しみやすさや親近感が生まれ、気軽に問合せしたくなるはずです。
職人感
「技術力の高さ」や「実直さ」、「職人のこだわりの施工」といった職人感を打ち出していけば、求人にも有効でしょう。積極的に実際の写真が働く様子や表情を大きく掲載すれば、視覚的なアピール力も強く、信頼感があるHPに仕上がるはずです。
スタイリッシュ
スタイリッシュなデザインが自慢の建設業・工務店なら、それに合わせてHPもスタイリッシュなデザインで統一するのがおすすめです。メインカラーを絞り、フォントもスタイリッシュなものに、写真も自社で手掛けた住宅の外観や内装を大きく掲載するなどして統一感を出しましょう。
写真を豊富に掲載する
HPの良さは、何と言っても視覚に訴えられることです。テキストで長々と説明するよりも、画像を載せた方がよく伝わる場合も多々あるのです。とくに施工事例の写真は多くの閲覧者が参考にすることが分かっています。
建設業・工務店のHPでNGなデザインとは?
建設業・工務店がHPを制作する際に、NGなのは次のようなデザインです。
デザインのテイストがターゲットと合っていない
HPを立ち上げるに当たって考えなければならないのは、自社の「ペルソナ」を明確に設定することです。
ペルソナとは「自社を利用する典型的なユーザー像」のことです。自社がターゲットとするペルソナを明確にしたら、サイトデザインのテイストも方向性が定まるのではないでしょうか。
たとえば小さな子どもがいるファミリーにも手が届きやすい住宅を建設する工務店なら、家族での団らんがイメージできるような温かみのあるデザインが考えられるでしょう。スタイリッシュで高級感のあるデザインでは、いくら素敵でもミスマッチだと言えます。
表示速度が遅い
読み込みが遅かったりなかなかサイトが開けなかったりすれば、良いコンテンツの揃うHPでも、ユーザーは離脱してしまうでしょう。スマホで快適に情報収集できるのに慣れた昨今では、「表示に3秒以上かかると約半数が離脱してしまう」と言われています。デザインも大切ですが、表示速度も留意しましょう。
差別化が図れていないテンプレート
出来上がった型に写真・テキストをはめこめばHPが作れるテンプレートデザインは、簡単にHP制作ができコストをかけたくない企業にも人気です。ところがテンプレートデザインは他社も利用しがちで、競合他社と差別化が図りにくいのはデメリットです。また、機能も限定的で、凝ったものにしたい場合、希望通りにならないことも多々あるので注意しましょう。
HPで集客を上げようと考えるなら、オリジナルデザインのHP制作をおすすめします。ただし、自社の社員で作成するには限界があります。制作会社に依頼するのも1つの手でしょう。
「お問い合わせ」にスムーズにつながる動線がない
建設業・工務店に施工を依頼しようと考える見込み客がHPを訪れた際、トップページから自社の特徴や施工事例を確認後、問い合わせる流れを辿ると言われています。その流れのどこかに分かりにくさがあると、途中で離脱されてしまうでしょう。
目立つ問い合わせボタンを設置したり、入力フォームへの入力項目を極力少なく(氏名・メールアドレス・問い合わせ内容だけなど)したりして、気軽に問合せできる工夫も有効です。
事例
最後に、建設業・工務店がHPを制作して成功した事例を紹介しましょう。
大阪府の「株式会社 日吉組」のHPは、スタイリッシュなHPを制作しました。色味を抑え、文字も極限まで減らしたことで、大きく配置した画像のインパクトが強まっています。メイン画面の画像は3つの画像をスライドショーで自動的に切り替えて表示されるようになっていて、それぞれ別のキャッチコピーがつけられ思わず見入ってしまうHPに仕上がっているのです。
シンプルなデザインにすることで、自社のSNSなどへ誘導する導線も分かりやすくなっています。ユーザビリティが高いテンプレートを使用していることも特徴で、企業のイメージをアップさせることに成功した事例です。
まとめ
建設業・工務店が元請けからの受注に頼らず新規顧客を獲得したり、求人者を増やしたりするためには、自社のHPを持つことが必要不可欠だと言えます。見栄えの良さばかりを追求したHPよりも、自社の強みや魅力、提供できるサービスが閲覧者に分かりやすいHPが有効です。ユーザー視点に立ったHPこそが、集客や売り上げ、受注数アップにつながると言えるのです。