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人事制度の手順はどう進めるべき?その重要性や作り方のポイントを解説!

人事担当者はいろいろな業務を進めなければなりません。その中でも手をつけなければならないものに、人事制度の構築が挙げられます。人事制度の内容によって、従業員のモチベーションを左右しかねません。作業効率や生産性にも影響を及ぼしますが、どうやって構築すればいいかわからないという声もしばしば聞かれます。そこでここでは、人事制度の重要性や作り方について解説するので参考にしてください。

人事制度構築は大変重要

人事制度とは、合理的な理念や価値基準に基づき一貫的に人事管理を行うためのルールです。上司の単なる思い付きや好き嫌いなどで決められないように定めた客観的な制度です。人事制度を適切に構築することで、企業にさまざまな恩恵をもたらしてくれます。

従業員の処遇基準だけではない

人事制度とは、企業の人材マネジメント全般を指します。しかし現実的には「従業員の処遇を決定するための基準」と思われがちです。たしかに処遇基準も人事制度に当てはまります。しかしその一部にすぎません。

本当の意味での人事制度とは、自社の競争力や企業価値を向上させるための組織構築方法または、従業員のモチベーションを上げるためのシステムのことです。企業が果たすべき使命を達成するための制度と考えてください。

人材は企業に欠かせないもの

企業にはさまざまなリソースがあります。その中でも主要なものとして、モノとカネ、そして人材があります。人材とは言うまでもなく、従業員のことです。従業員の働きぶりは、企業の業績を大きく左右する要素です。従業員のモチベーションを高め、生産効率性を高めるためにはそれぞれの能力を最大限発揮できる環境が求められます。「適材適所」というものです。

自分の能力をいかんなく発揮でき、仕事にやりがいが感じられるような環境を整備するために人事制度は必要です。従業員のモチベーションをアップし、成長しやすい環境を作るために人事制度をどう構築すればいいか考えていきましょう。

いったん作れば終わりではない

以下で詳しく見ていきますが、人事制度の作り方のポイントを押さえて整備できればそれでおしまい、ではありません。その時には適切だった制度も、時間の経過とともにふさわしくない制度に変化しているかもしれません。労働法規関連も、今後見直しが行われる可能性もあります。

人事制度は作り上げたら、定期的に検証する必要もあります。もしその時点にはそぐわないものがあれば見直し、常にブラッシュアップしていくことも求められる制度です

人事制度を決める要素について解説

人事制度の重要性のわかったところで、具体的にどのように構築していくか見ていきましょう。そのためには、人材管理や処遇を決める制度について把握しておかなければなりません。

等級制度

まずは等級制度です。簡単にいえば、従業員をレベル別に振り分ける制度のことです。等級によって、仕事内容や処遇を決められます。従業員にとってもメリットがあって、等級を割り振ることで社内における自分のポジションがはっきりします。そして何をすべきか、それもはっきりするでしょう。

等級制度は一般的に能力をベースにした職能、職務内容に応じた職務、仕事上の役割で振り分ける役割の3つの要素によって構成されます。等級を検討するにあたって注意すべきなのは、社員の序列を決めるためのものではない点です。等級制度を整備することで従業員にキャリアアップのための道筋を提示するものと考えてください。

評価制度

評価も重要な要素の一つです。従業員の仕事への取り組みを一定の基準に基づき評価する制度のことです。能力や成果のほかにも仕事への姿勢など全体的に見て評価できるような制度を構築しましょう。評価制度は、従業員を査定するためのものと思われがちです。しかし人材育成を目的とした制度であることを忘れないでください。

評価制度は客観的かつ明確なものを意識しましょう。評価基準がはっきりしていれば、自分が次に何を目指すべきか従業員の動機づけにも使えるからです。MBOやコンピテンシー評価、360度評価など人事評価の手法はいろいろと紹介されています。

報酬制度

従業員に支給する報酬の基準に関する制度です。報酬というと金銭的なものをイメージする人も多いでしょう。たしかに給料やボーナス、退職金など金銭的な要素も含まれます。その他にも非金銭的報酬といって、仕事に関する権限や裁量権、学習機会などもあります。

報酬基準ですが、業務や職能、役割などが挙げられるでしょう。その他にも年齢や勤続年数なども考慮に入れる必要があるでしょう。適切な報酬を支払うことによって、従業員に与えられた業務を遂行してもらうのが目的です。そのほかにも必要な人材を確保するために導入する企業も少なくありません。

人事制度を構築するには?作り方のポイントを解説

人事制度を構築するにあたって、いくつかのステップを踏む必要があります。そこでここでは人事制度を作るにあたっての一般的な手順について紹介するので、参考にしてください。

目的の明確化

まずなぜ人事制度を構築するのか、その目的を明確にしておきましょう。目的がはっきりしていれば、従業員の間にも浸透しやすいですし、円滑な導入が期待できるからです。人事制度が明確であれば、企業が従業員に何を求めているかもはっきりします。また評価がはっきりしていると、何をすれば評価につながるかも明確なので従業員のモチベーション向上につなげられます。

そのためにヒントとなるものが、企業理念です。人事制度は企業の考え方を反映させたものと考えられます。企業理念とは社会に貢献するためにどのようなことをすべきかを表したものです。そして企業理念を実現するためには、どのような人材を求めているかも考えなければなりません。企業理念から逆算していって、どのような従業員を育てる必要があるのか、理想の従業員を育成するためにどのような人事制度を構築すべきか、というアプローチで考えていくといいでしょう。

現状分析

目的がはっきりしたところで、企業の現状分析をしてみましょう。具体的には人事面でどのような問題が生じているか、課題は何かを明確にすることです。現状分析するにあたって、人事担当だけでなく、社内全体を巻き込んでいきましょう。

自分たちが把握していないところで、従業員が企業に対してなんらかの不満を抱えていることもあるからです。従業員に対して現場に何か不満を抱いていないか、アンケートを取ってみましょう。従業員の不満を改善できるような人事制度が構築できれば、仕事へのモチベーションも回復します。

逆に従業員の不満に耳を傾けずに人事制度を作っても、ピント外れのルールになってしまうでしょう。従業員も「自分たちの意見をまるで聞いてもらえない」と思って、仕事への情熱がますます低下してしまいます。

評価制度の設計

人事制度構築の目的や課題がはっきりしたところで、これらが反映された制度設計を進めていきましょう。先ほど紹介した等級・評価・報酬の中でも、まずは等級制度の設計から進めるのが一般的です。等級制度は人事制度の骨格になるものだからです。

等級制度はいくつかの要素によって構成されます。まずは等級です。社内における各従業員の位置づけを決めるもので、等級をベースにして給料も決定する形になります。また役職も要素の一つです。課長や部長など管理職のことを指します。また役職のつかない人に対して、参事などの呼称が必要な企業もあるでしょう。職種も要素の一つです。会社における役割を示したものです。

各要素が固まったところで、昇格するための基準も検討してください。在級年数や年齢、評価などいろいろな要素を加味しなければなりません。これが評価制度につながっていきます。

評価制度を設計するにあたって、いくつかの種類があることを理解しなければなりません。昇格や昇進、昇給など評価結果の使用目的で分類する方法がまず考えられます。また評価対象の分類も種類の一つです。能力以外にも、仕事の取り組み姿勢などで評価する情意評価、目標達成度や生産個数など業績をベースにした成果評価などが挙げられます。

最後に報酬制度の設計です。等級制度と評価制度がこの段階で決まっているはずです。この設計を元にして、従業員の待遇にどう反映するのか考えるのがベースになります。売上に占める人件費の比率や競合他社の賃金システム、その時々の景気などいろいろな側面から総合的に判断しなければなりません。また長期的視点にたって、経営に悪影響を及ぼさない範囲で検討する必要があります。

3つの制度の順番は以上に紹介した通りですが、制度を作ってもまだ調整の必要が出てくるかもしれません。その時には、相互に調整して擦り合わせることも検討してください。

明文化

制度設計のできたところで、それを文章できちんと説明できるようにしておきましょう。人事制度を作っても、従業員がそのことを理解していなければ、元も子もありません。全従業員へ明確かつ平等に伝えられるようにしてください。そうすれば、従業員それぞれが「公正な目で自分のことを会社は評価してくれている」と実感できるからです。

人事制度の明文化は、等級規定と人事評価規定、賃金規定の3つによって構成されるのが一般的です。ただし設計のやり方によっては、若干レイアウトが異なる場合もあります。自分たちで最初から作成するのが難しければ、ネットにテンプレがいろいろと紹介されています。テンプレをベースにして、自分たちの状況に当てはめて微調整すると、効率的に人事制度の明文化が可能です。

法的チェック

忘れてはならないのが、法的チェックです。人事制度を作ったけれどもそれが法律に抵触するようであれば、後々問題になります。自分たちだけで検討するのではなく、弁護士などの専門家に問題はないかアドバイスをもらいましょう。人事制度は労働基準法や労働契約法など、関連するルールがいろいろとあります。法律上に問題がないか、専門家の目を入れることが重要です。

シミュレーション

人事制度が固まったところで、実際にそのルールで運用した場合にどうなるのかシミュレーションしてみましょう。新制度の下で、全従業員の賃金がどうなるのか、人件費の総額がどうなるのかを検討してください。とくに人件費の総額が自分たちの想定している一定の範囲内に収まっているか、必ずチェックしてください。許容を超えた人件費になっていると、結果的に経営を圧迫する恐れがあります。

おそらく人事制度導入直後、数年は人件費が上昇する恐れはあります。しかしその後に落ち着けば、問題ありません。もし昇給額があまりにも多ければ、制度設計を見直してください。自分たちの希望する結果が得られるまでは、微調整を行いましょう。

説明会の実施

人事制度が決まったところで、説明会を実施しましょう。新しい人事制度について、従業員に理解してもらう場を設けてください。人事制度を説明するにあたって、「自社は従業員に対してこのような思いがあります」というメッセージも合わせて説明しましょう。このメッセージが入っているかどうかで、従業員が新制度を受け入れやすくなるといわれています。

一方的に説明するのではなく、質疑応答の時間も設けましょう。質疑応答を通じて、従業員がどのようなところに疑問や不安を抱いているかがわかるからです。また疑問や不安に応えることで、従業員の抱える問題点を払しょくすることが大事です。ガイドブックやマニュアルのような文書にしてまとめ、従業員に目を通してもらうのもいいでしょう。ガイドブックを呼んで後日疑問点が出てくる従業員もいるでしょうが、そのような問い合わせにも親身に対応することです。

人事制度運用にあたっての注意点

人事制度を運用するにあたって、いくつか押さえてほしいポイントがあります。そのポイントとなぜそのことが重要なのかについても、運用前に理解しておきましょう。

上司からのフィードバックを実施する

人事評価にあたって、上司からのフィードバックは必須です。ただ単に従業員に評価だけを伝えると、何が良くて何が悪かったのかわかりません。また「自分は公平に評価されているのだろうか?」と疑心を生み出しかねません。

そこでなぜそのような評価になったのか、客観的な根拠を示すようにしてください。そうすれば、なぜ自分がこの評価になったのかわかるようになります。またどこが課題かも明確になるので、今後どのようなところに気をつけて業務に当たればいいかもわかります。多少時間がかかっても、フィードバックは欠かさず行うように意識を徹底してください。

人事評価エラーをあらかじめ把握しておく

人事評価制度を設けても、正しく評価されない場合はどうしても出てきます。代表的なエラーがいくつかあるので、人事担当者はあらかじめ頭に入れておきましょう。

まずはハロー効果です。特定の従業員の良いところを見てみると、ほかのところも良かったに違いないと思い込むことによって生じるエラーです。ハロー効果が起こらないようにするためには、項目ごとに評価が適切か見る目を持つよう指導しましょう。

また中心化傾向もエラー要因として、よく起こることといわれています。どの従業員に対しても平均的な評価をつけてしまうエラーのことです。これは自分の評価で従業員から悪く思われたくないと考えることで起こります。評価基準があいまいで評価者の自由裁量が大きいと、中心化傾向が起こりやすくなります。そこでさらに明確な評価項目や基準に見直すことが大事です。

同じく従業員からよく思われたいと思うと、寛大化傾向が起こりがちなので注意してください。寛大化傾向とは、全体的に甘く評価してしまうことです。寛大化傾向対策としては、評価基準の周知徹底が挙げられます。感情的ではなく、客観的な評価を下すように指導を進めましょう。低評価でも事実や根拠に基づく評価であれば、従業員の成長につながっていくことも説明してください。

論理的誤差も評価エラーの主要な要因の一つです。これは評価者が自分独自の論理や見解で評価をつけてしまうことで発生します。論理的誤差が起こらないようにするためには、評価基準の定義をていねいに指導することです。合わせて自分の想像や推測で判断しないように通知することも忘れないでください。

まとめ

人事制度を設けることによって、従業員の能力を向上させる仕組みが具現化されます。その結果、企業ミッションの達成に一歩近づきます。人事制度を作るにあたって重要なのは、従業員への周知徹底や納得してもらうことです。従業員が人事に関するルールに納得していなければ、業務へのモチベーションが低下して、経営戦略にもマイナスの効果をもたらします。

従業員の不満に耳を傾けつつ、以上で紹介した手順をベースに人事制度を構築しましょう。人材は企業の最重要資源の一つであると、ビジネス界では広く浸透しています。人事制度を固定させ、定期的に見直してより良いものにブラッシュアップさせましょう。

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