SNSを使ったマーケティングは、もはや集客や販売促進になくてはならないものだと言えます。そんなSNSマーケティングの中でも、今注目を集めているのは、「インフルエンサーマーケティング」です。
その名の通り、インフルエンサーと連携して行うマーケティングのことですが、今さまざまな企業が力を入れていることが分かっています。そんなインフルエンサーマーケティングの種類や費用対効果、手法、そして成功事例と失敗事例を解説します。
「インフルエンサーマーケティング」とは?
まずは、インフルエンサーマーケティングの基礎知識をおさらいしていきましょう。
「インフルエンサー」とは?
多くのフォロワーを抱え、生活スタイルや持ち物などのライフスタイルの発信が注目を集める人物を「インフルエンサー」と呼びます。多くの場合フォロワーの多さを判断基準にし、フォロワーが1万人に満たない「ナノインフルエンサー」、数万人程度の「マイクロインフルエンサー」、10万人規模の「マクロ(パワー)インフルエンサー」、そして100万人規模の「トップ(メガ)インフルエンサー」に分けられます。
「インフルエンサーマーケティング」とは?
SNS上での影響力・発信力のあるインフルエンサーをマーケティングに使うのが「インフルエンサーマーケティング」です。従来は企業が消費者に直接PRしていたところをインフルエンサーに依頼して、口コミを通して消費者行動に影響を与えることを狙ったマーケティング手法です。
インフルエンサーのもつ影響力が大きなほどマーケティング効果も高く、たとえば著名人が多く含まれるトップインフルエンサーに依頼すれば爆発的な拡散が期待できます。ただし、マクロ(パワー)インフルエンサーは、メディア露出こそ少ないものの、SNS上ではグルメや美容などの特定ジャンルで圧倒的な支持を得ていて説得力も絶大です。
マイクロインフルエンサーはフォロワーとの距離が近く親近感が得やすい存在であることから、共感から購買行動につなげやすい魅力があります。ナノインフルエンサーは友達感覚で好感をもつフォロワーが多く、コメントや「いいね!」など反応の高さが特徴です。それぞれリーチ力とエンゲージメント率に違いがあるので、マーケティングで狙うものを明確にしてインフルエンサーを選ぶ必要があります。
インフルエンサーマーケティングの市場規模
ある企業が行った調査によると、2022年におけるインフルエンサーマーケティングの市場規模は、約615億円となりました。さらに2025年には約10億円、2027年には約13億円になると予想されています。
インフルエンサーマーケティングは、今後も市場規模を伸ばしていくことが十分考えられると言えます。
「費用対効果」が高いインフルエンサーマーケティング!その理由とは?
インフルエンサーマーケティングは、その費用対効果の高さから多くの企業で取り入れられています。積極的に取り入れられる理由として、次の8点が理由だと考えられています。
あからさまな広告・訴求を不快に感じるユーザーに受け入れられやすい
企業が直接的にユーザーに対してPRする従来型の広告は、目立って気を引けるよう過剰なコンテンツやクリエイティブを使用していました。このようなあからさまな広告や訴求は、ウェブページの快適な閲覧を妨げることも多々あり、結果的にユーザーに不快感を与えていたのです。
その点、企業とユーザーとの間にインフルエンサーが加わることで、あからさまな広告臭がなくなり受け入れやすくなる効果が期待できます。企業のアカウントとは異なり、インフルエンサーのアカウントはブロックされにくいのもメリットです。
消費者視点からの発信による「共感」と訴求力の高さ
企業からの強い訴求やPRはユーザーに不快感を持たれがちですが、インフルエンサーによるコンテンツは好意的にみられる傾向にあります。それはユーザーがインフルエンサーを身近に感じ、「共感」するからです。また、インフルエンサーは独自の世界観をもち、特定ジャンルに長けているインフルエンサーの訴求力は高く、説得力があり購入につなげやすいのです。
SNSをトレンド検索のツールにしているユーザーの増加
かつてトレンドなどの情報を得たい時に使われていたのが、検索エンジンです。そのため企業側も、SEO(検索エンジン最適化)やバナー広告などの対策を行ってきたはずです。
ところが近年では、InstagramやTwitterなどのSNSを検索する「SNS検索」が主流になっています。とくに若者の中では、Instagramのハッシュタグ検索を行うことを「タグる」と呼んで、トレンド情報を仕入れるために行っています。そのようなSNS検索をするユーザーにとって、インフルエンサーの投稿は非常に目に留まりやすいコンテンツだと言えます。
インフルエンサーのクリエイティブ力による魅力的なPR
インフルエンサーは元々、その投稿の魅力から多くのフォロワーを獲得しています。投稿の内容や編集、見せ方がうまく、多くの人の心をつかむ魅力があると言えるでしょう。そんなインフルエンサーによるPRは、企業が作るものよりも形式ばったものではなく、自由で柔軟な発想、フォロワーが求める、喜ぶ内容のものになることが期待できます。
特定の年代・ジャンルへの訴求力の高さ
インフルエンサーはそれぞれ、グルメやファッション、メイクや旅行などの分野に特化しています。そして、それらに興味・関心の高いユーザーがフォロワーとして集まっています。起用するインフルエンサーによって、テレビCMのように幅広い年代の不特定多数に対してのマーケティングとは異なり、年代や性別、ターゲットを絞ったマーケティングが可能になるのです。
情報拡散力がある
数千~数十万、数百万人ものフォロワーをもつインフルエンサーの発信は、非常に拡散力が強いのが特徴です。インフルエンサーの1度だけのPRでも、多くのユーザーの目に触れることが可能になります。とくにTwitterでは、PRを見たユーザーが「いいね!」やリツイートなどのアクションを起こすことからさらに情報が拡散されます。
オンライン販売との相性が良い
SNSによるマーケティングは、オンライン販売との親和性が高いことで知られています。画像や動画で商品やサービスを紹介し、自然な流れで自社のECサイトに導けます。ユーザーはインフルエンサーのPR投稿を見て、気になった熱量が下がらないうちに購入行動に移る道筋が非常にスムーズなのです。
商品のイメージが付きやすい
普段よく投稿を閲覧して慣れ親しんでいるインフルエンサーが使用感を伝える商材は、それを見ているフォロワーも「自分ごと」として感じます。そして具体的なイメージを湧かせやすい効果があるのです。
インフルエンサーマーケティングの5つの手法
「インフルエンサーマーケティング」とはインフルエンサーに依頼して行うマーケティングですが、その手法は次の5つに分類できます。
商品ギフティング型
自社製品をインフルエンサーに送って、実際に使用・体験してもらった感想を投稿してもらう手法です。商品を提供のため送付する必要がありますが、手軽にできる手法だと言えます。サービスではなく有形商品を扱う企業向けです。
現地訪問型
インフルエンサーを招いて体験してもらい、その様子をレポートしてもらう手法です。店舗に来店してサービスを受けてもらったり、観光地を観光してもらったりすることが考えられます。イベントで登壇してもらえば、集客にもつながるでしょう。
ただしインフルエンサーを招くのに、宿泊費や交通費などがかかり、インフルエンサーの拘束時間も長くなるので依頼費用も多くかかるのはデメリットと言えます。
監修・コラボ型
自社製品・サービスの開発はイベントの企画において、インフルエンサーにコラボ・監修を依頼する施策です。飲食店の新メニュー開発やイベント企画などが考えられます。
インフルエンサーの意見やセンスを取り入れることでターゲットに刺さるものが作れると同時に、「〇〇コラボ」と称することでインフルエンサーの知名度も利用できるでしょう。自社では思いつかないような発想をもらえ、ブランド価値を高められる機会にもなる場合があります。
ライブコマース型
インフルエンサーが行うライブ配信で、商品を紹介してもらいます。ライブ配信では視聴者からのコメントにリアルタイムでインフルエンサーが反応できるので、質問や疑問点が即座に解決でき購買行動につなげやすいメリットがあります。
アンバサダー型
インフルエンサーをブランドや商品の「アンバサダー」に就任し、継続的にPR活動に参加したり魅力を発信したりしてもらう手法です。選ぶインフルエンサーによってブランドや商品のイメージが左右される側面があるので、インフルエンサー選びが重要になります。
プラットフォームと訴求したい商材ジャンルとの相性
企業が訴求したい商材を「ファミリー系」「ダイエット系」「家具インテリア・生活雑貨系」「創作系(アート・マンが・イラスト・歌)」「美容・コスメ系」「アパレル・ファッション系」「旅行・アウトドア系」「料理・スイーツ・グルメ系」の8ジャンルに分けた時、どんなSNSのプラットフォームとの相性が良いのかを把握しておきましょう。
YouTube
動画投稿サイトであるYouTubeは、テキストでは伝えきれない感情や事象を一目で伝えられるのが大きな魅力だと言えます。YouTube内で活躍するインフルエンサーが「ユーチューバー」です。
動画のため、有形・無形を問わずさまざまな商材をPRできること、一度作ったコンテンツはストックされるので時間が経っても視聴されること、動画の内容によって商材の認知度アップから購入促進までできることなどが、YouTubeによるインフルエンサーマーケティングの強みです。
ユーザーも10代から50代までと幅広く、若年層を中心に小さい子どもの家庭は育児にYouTubeを利用するのも一般化しています。動画内にボタンを追加でき、紹介した商材をECサイトでの購入に誘導できる機能も有効です。YouTubeによるインフルエンサーマーケティングに向いているジャンルは、「ファミリー系」「ダイエット系」「家具インテリア・生活雑貨系」です。
Instagramで活躍するインフルエンサーは、「インスタグラマー」と呼ばれます。かつてInstagramは若い女性がメインユーザーだと言われていましたが、現在のユーザー男女比はほぼ半々となっています。いわゆる「インスタ映え」する画像の投稿のみならず、「フィード」や「リール」、「ストーリーズ」などでさまざまな尺の動画も投稿可能です。ライブ配信ができる「インスタライブ」では、双方向でのやり取りもできます。
Instagramによるインフルエンサーマーケティングに向いているのは、「美容・コスメ系」「アパレル・ファッション系」のジャンルです。インスタ映えするおしゃれな画像や動画との親和性が高いジャンルが向いていると言えます。
TikTok
多彩なエフェクト機能で編集したショート動画の投稿サイトであるTikTokには、多くのインフルエンサー「ティックトッカー」が存在します。かつてはダンスや振り付け動画がバズっていましたが、
現在では「今人気のマンガ3選」「人気ホテルベスト5」など、おすすめ・まとめ系の視聴者にとって有益な情報を伝える動画も人気です。主なユーザー層は10代から20代の若年層です。TikTokを利用したインフルエンサーマーケティングに向いているジャンルは、「美容・コスメ系」「旅行・アウトドア系」「創作系(アート・マンガ・イラスト・歌)」です。
Twitterは140文字以内のテキスト投稿SNSで、拡散力がありリアルタイムで起きている情報を投稿したり検索したりするのに向いています。140文字以内というとマーケティングには制約があるように感じられますが、逆に短くインパクトのある投稿は短い時間で読みやすいのが人気の理由と言えます。
1つの投稿に動画や画像などを4つまで記載することも可能です。Twitterによるインフルエンサーマーケティングに向いているのは、「創作系(アート・マンガ・イラスト・歌)」「料理・スイーツ・グルメ系」です。
失敗事例から学ぶ!インフルエンサーマーケティングの注意点とは
インフルエンサーマーケティングのよくある失敗事例から、注意する点を学びましょう。
インフルエンサーの選出を間違った事例
インフルエンサーの選出を間違ったため、思うような効果が上がらなかったという事例は多々あります。
インフルエンサーがどのようなジャンルの投稿をしているか、どのようなテイストの投稿をしているのか、フォロワーはどのようなジャンルに興味・関心をもっているのかをしっかり見極め、自社のブランドとの親和性の高いインフルエンザーを選びましょう。フォロワー数の多さだけで選ぶのは、NGです。
インフルエンサーと共通認識を図らなかった事例
インフルエンサーは、独自の世界観やポリシーを持ってコンテンツを制作するものです。企業側はインフルエンサーにマーケティングを依頼する場合、動画制作会社に依頼するのとは違って100%こちらが思うようなものになると考えるのは間違いです。インフルエンサーの普段の様子と変わらない投稿だからこそ、フォロワーを引き付けるとも言えます。
ただし企業側の譲れない点や方向性などはあるはずなので、あらかじめ十分にインフルエンサーと話し合って、共通認識を深めておくことが大切です。それを怠ったことで、企業側の思うようなコンテンツにならなかったという事例が頻出しています。
炎上リスクを想定しなかった事例
企業からPRの依頼を受けているのにも関わらず、それを隠してSNSでおすすめするのは「ステルスマーケティング(ステマ)」と呼ばれる行為です。PRなのを隠し、あたかも自分で見つけたものをおすすめするかのような行為は、ユーザーを欺く行為であり炎上のリスクが高い行為です。ステマはインフルエンサーと同様に、企業側も批判の対象となります。
また、ステマでなくてもインフルエンサーの問題発言やモラルに掛ける言動、過去の経歴などが炎上の対象になる場合に気を付けなければなりません。インフルエンサーという人間が関係する以上、うまくコントロールしにくいシーンも必ずありますが、関係性が構築できないと炎上のリスクも高まります。
インフルエンサーマーケティングの成功事例
資生堂は、『マジョリカマジョルカ』の新作ファンデーションのPRに、「コスメヲタちゃんねるサラ」というチャンネルを運営するコスメ系ユーチューバー「サラ」さんを起用しました。サラさんのフォロワーは約64万人に上ります。ファンデーションの紹介動画は、再生回数18万回以上にもなり、「いいね!」も3万以上を獲得しました。
1食置き換えダイエットに使える麺やパンの開発・販売を手掛ける「BASE FOOD」は、認知拡大のために人気インスタグラマーにPRを依頼しました。その後は実際に商品を購入した消費者からアンバサダーを募り、消費者目線での発信を促しています。
Twitterで22万人以上のフォロワーを擁する漫画家「横井了一」さんとコラボしたのは、Panasonicです。空気清浄機「ナノイーX」の使用感などを伝える漫画をTwitter上にアップしてもらったところ、3000件以上の「いいね!」が付きました。家電は高額なものなので、Instagramでおしゃれな画像を載せたところで販売数を伸ばすのは難しいでしょう。漫画で詳細に商品紹介をしたのが良かったのだと言えます。
まとめ
企業が消費者に直接PRするのとは違い、消費者側に立ち共感を得やすいインフルエンサーがPRすることで、費用対効果の高いPRが展開できます。それぞれのSNSの特徴と商材との相性も加味して、依頼するインフルエンサーを決めましょう。インフルエンサーは多くのユーザーを引き付ける魅力があるので、その魅力を最大限に生かしつつ、炎上しないように運用していくことが大切です。