さまざまなマーケティング施策があるものの、消費者自身が多くの情報を自分で入手できるようになった現代は、一方的な発信をしていては受け入れられなくなりつつあります。
そこで最新マーケティング施策として注目されているのが「UGC」です。SNSマーケティングにUGCを取り入れる手法、つまり「SNS×UGC」について、メリットや企業での具体的な活用事例などを交えて、UGCについて徹底解説していきます。
UGCとは?
まずはUGCの基礎となる、意味や定義について解説していきます。
UGCの意味・定義
「User Generated Contents」の頭文字を取った単語であるUGC は、「ユーザーが製作・生成したコンテンツ」の総称を指します。具体的には、Instagramやtwitter、FacebookなどのSNSやブログ、レビューサイトやECサイトに書き込みされた感想、動画共有サイトへの投稿、ブログやイラスト・小説投稿サイト、Wikiや掲示板への投稿など多岐にわたります。
UGCとCGMの違い
UGCと似たものにCGM (Consumer Generated Media)があります。CGMとは、Yahoo!知恵袋などのナレッジコミュニティサイトや、価格.comや食べログなどの口コミサイトなど、一般ユーザーの書き込みによってコンテンツが作り上げられていく「メディア」を指します。
一方のUGCはユーザーが作り上げた「サイトそのもの」だという点で違いがあります。
UGCが注目されている理由とは
ここからは、UGCが注目されている理由について考えていきます。次の4点が挙げられます。
企業側が発信する広告の「押し付け感」への嫌悪
バナーや動画、タイムライン広告やポップアップ広告など、ネット上にはさまざまな形態の広告があふれています。しかし、広告に対して嫌悪感を持つ人が増えています。生まれた時からネット環境にさらされているZ世代などはとくに、ネット広告の押し付け感を見抜く目が醸成されていると言えます。
マイボイスコム株式会社が行った「インターネット広告に関するアンケート」によると、インターネット広告が表示された際に「内容やタイミングによっては読む」人は36.5%、「大体読む」人が2.1%に留まりました。残りの約6割は、広告に接した際に「すぐ閉じる」「内容を読まない」という判断をしていることが分かりました。
企業のマーケティング担当者は、何とか広告を読んでもらおうとあの手この手で広告施策を打っているものの、その「あの手この手で読ませようとしている」ことを感じ取って嫌悪感を抱かれてしまっては元も子もありません。「顧客に気持ちよく買い物をしてもらう」という本質に立ち返らないとならないのです。企業が発信している情報と消費者が欲しい情報とのズレが生じているのです。
反面、実際にサービスや商品を利用した消費者によるUGCはリアリティがあり、信頼を得やすいのです。
購買前における意思決定に与える影響
アライドアーキテクツが行った調査(2022年8月)によると、「サービスや商品の購入前にレビューや口コミといったUGCを信頼しますか」の問いに対し「信頼する」と答えた人は64.6%に上りました。ニールセンデジタルが2017年に行った同調査では33%、2019年では45%だったことから、年々UCGへの信頼感は高まっていると言えます。
消費行動への影響力が最も高いSNSが、Instagramです。「インスタ映え」する写真の投稿サイトのイメージが強いInstagramですが、今では多くの人が検索プラットフォームとして利用しています。
約3,300万人のアクティブユーザーのうち、83%が新しいサービスや商品を探すためにInstagramを訪れていることが分かっています。とくに若年女性でその傾向は顕著です。流行のファッション情報を他サービスで調べる人が8%なのに対しInstagramを使う人は44%に上ります。同様に話題のグルメスポット、話題のレジャースポットなどの情報についても他サービスに比べてInstagramで情報収集する人が倍近くいることが分かっています。
このように、UGCの中には毎日膨大な有益情報が投稿され、サービスや商品を検討したいと考える消費者のニーズを満たしているのです。
コンテンツ量の増加
加速度的に変容を続けるデジタルマーケティング市場に対して、網羅的にチャネルを試すとしたらクリエイティブ政策に膨大な手間とコストを投資しなければなりません。その点、消費者目線の表現のUGCをマーケティングに使えば、クリエイティブの量も質も保ちつつ効果的な広告活動が叶うのです。
コロナ禍における消費活動の変化
アライドアーキテクツが行った「新型コロナがもたらした新しい生活様式における消費者のSNS利用実態調査」によると、新しい生活様式が推奨され始めてから外出を減らすために「事前にSNSで商品やサービスについての情報を検索・収集することが増えた」と答えた人は約30%でした。
また、「デリバリーや通販の利用機会が増え、SNSで新しいサービス内容や口コミを調べることが増えた」人は約28%でした。ニューノーマル時代に突入し、UGCの重要性がさらに高まっているのです。
マーケティングにUGCを取り入れるとどんなメリットがある?
企業マーケティングに注目を集めるUGCを取り入れることで生まれるメリットは、具体的には次の3点が考えられます。
消費者の親近感や信頼感を醸成できる
有名人を起用したマーケティングは定番ですが、これは消費者の「有名人のようになりたい」という憧れや好感度を利用したものです。ただし有名人を起用したマーケティングでは補完できないジャンルの商品・サービスもあります。また、企業側から一方的にサービスや商品の魅力を伝えた場合、押し付け感が出てしまいます。
消費者にとって身近でリアリティを感じられるUGCを使ったマーケティングなら、消費者は親近感や信頼感を感じるはずです。また、多くの消費者の客観的な評価として説得力が増し、信頼されやすくなるのです。
コンテンツ制作の時間とコストを押さえながらもクリエイティブ量が確保できる
マーケティングチャネルは非常に多様化しているため網羅は難しく、網羅しようとすれば時間もコストもかかります。UGCを上手く取り入れることで、クリエイティブ製作に費やす時間もコストもスリム化できます。
UGCによるマーケティングの良さは、企業側も気づかないような商品の訴求ポイントや見せ方が詰まっている点です。実際に商品やサービスを利用しているからこそのリアルな視点、企業にはない斬新な切り口は、新たなユーザーの獲得に繋がっていきます。
「SNSの情報をきっかけや参考にして、今まで利用したことがないECサイトで商品を購入したことがありますか」という、ECサイトについての調査があります。SNSの種類ごとに「はい」と答えた割合は、Instagramで60.7%、Twitterで55.2%、Facebookで54.4%、YouTubeで54.4%、LINEで51.9%という結果でした。どのSNSにおいても、半数以上の人が口コミや感想、レビュー投稿されているのを見て購買活動の参考やきっかけにしていることになります。
つまり、マーケティング担当者やクリエイターの時間やコストを割かずとも、ユーザーが優秀な営業マンになってくれているというわけです。
商品開発や施策改善のヒントが手に入る
UGCはユーザーの生の声です。実生活でどのようにサービスや商品を使用しているのか、どのような点に価値を見出しているのかといった消費者心理や消費者行動を理解する大きなヒントになります。UGCを分析することで、商品開発や施策の改善についての貴重な資産が手に入るのです。
UGC活用における代表的な4つの手法
ここからは、具体的にどのようにUGCを活用していくのか、代表的な4つの手法を紹介していきます。
オウンドメディアにUGCを掲載する
UGCをランディングページやECサイトに掲載すれば、サイトを訪問したユーザーに対して購買意欲を喚起させられます。また、口コミサイトへの離脱も防げます。企業側からの一方的な宣伝にとどまらず、UGCを掲載することでコンテンツも充実させられます。
SNS広告のクリエイティブ(宣材写真)にUGCを採用する
SNS広告は、ネット広告よりも宣伝色を抑えられる効果があります。そこに企業側が撮影したクリエイティブ(宣材写真)を掲載しては、SNSのフィードに馴染みにくい難点があります。UGCを活用することでリアリティが増し、宣伝色もないので受け入れられやすくなります。自社で制作しなくても大量の素材を入手できるのも利点です。
UGCをSNSの公式アカウントに採用する
自社のSNS公式アカウント上でも、UGCを採用してみましょう。ファンのUGCをSNSの公式アカウントで紹介すれば、コミュニケーションの一環となり好感度も高められます。ファン同士のコミュニケーションも発生するでしょう。素材収集の手間も省け、企業側で用意した素材よりも親しみが持て、フィードに馴染むクリエイティブが手に入ります。
UGCを商品の同梱物に活用する
通販商品に同梱する冊子などの印刷物にUGCを活用すれば、自分以外のユーザーがどのように使用しているかを知ったり、多くのユーザーから支持されているものを自分も手にしているんだという満足感が高まったりしてリピート購入の促進につながります。
印刷物に採用されたユーザーが、採用されたことをSNSに投稿したり、印刷物を読んだユーザーが「自分も投稿しようかな」というモチベーションを持ったりすることも期待できます。
UGC活用成功のためのポイント
UGCの活用は一度きりでは効果がなく、UGCを収集したり生成したりした後は、継続的に活用していかなければなりません。その際に、効果の検証も必要です。そのプロセスの中で、UGC活用成功のためのポイントを2点紹介します。
UGCを収集・生成するプロセスにおけるポイント
UGCの活用で成果を上げるには、まずは多くの種類のUGCを収集しましょう。固定概念にとらわれていると、つい自社で期待するUGCを収集してしまいがちです。ところが企業が考える「良いUGC」と消費者が求める情報がずれていることは多々あります。自社に関するUGCを幅広く収集してみましょう。
ただし、自社がUGCで解決したい課題については明確にしてから収集することが大切です。商品の「認知度をアップ」させたいのか、商品についての「理解度をアップ」させたいのか、「商品の継続購入」を促したいのかなど、解決したい課題ごとに最適なUGCの種類は異なってくるのです。
UGCを活用・効果を検証するプロセスにおけるポイント
UGCを一度掲載しただけでは、効果につなげるのは難しいでしょう。たとえばUGCをランディングページに掲載した場合、UGCを掲載する場所や掲載枚数、掲載するUGCの選定などさまざまな要素についてA/Bテスト(Aパターン・Bパターンの2つのパターンを用意して効果を比較するテスト)を行って効果を検証します。そして反応の良いUGCについて探りながら、継続してUGGの活用を続けていきましょう。
UGCを生み出すための4つの手法と企業事例
UGCは活用するだけでなく、積極的に生み出していくのも有効です。UGCを生み出す4つの手法について、企業の実際の事例を挙げて紹介していきます。
ユーザーがSNSに投稿したくなる商品・サービスの開発
写真映えするメニューや思わず写真に撮りたくなるような商品は、シェアしたくなるものです。
たとえばカプセルトイで爆発的にヒットした「コップのフチ子」は、さまざまなフチにフィギュアを置いたときのユニークなポーズを写真に収めた人々により、SNS上で拡散されました。
「メガ盛り」の料理などインパクトの強いメニュー、ホスピタリティにあふれたサービスなども口コミ数や高評価、話題性につながることが期待できます。
ハッシュタグキャンペーン
自然発生的に拡散されるのがベストですが、そのようなコンテンツが無い場合はユーザーに投稿を促すキャンペーンを行いましょう。独自のハッシュタグを作り、撮影した画像とともにSNSにアップするキャンペーンです。
たとえば亀田製菓の「柿の種」のキャンペーンでは、10月10日の「柿の種の日」に合わせたtwitterのフォロー&リツイートキャンペーンを開催しました。亀田製菓のTwitterをフォローし投稿をリツイートすれば、プレゼントに応募できるキャンペーンでしたが、ハッシュタグに「#亀田の柿の種を紹介するよ」を付けて柿の種に関するコメントをすると当選確率がアップするという内容でした。
このようなキャンペーンの良さは、短期間で大量のUGCを生成できる点です。
インフルエンサー施策
SNS上で影響力を持っているのは、インフルエンサーです。自社の商品やサービスを試した様子や感想をSNSにアップしてもらえば、UGCが効率よく生成できます。拡散力をもつインフルエンサーであればあるほど、短期間で多くのハッシュタグ投稿が生成されます。
既存顧客やファンとのコミュニケーションを取る
ハッシュタグキャンペーンやインフルエンサー施策は、効果は大きいものの単発的です。日頃から継続して、既存顧客やファンとのコミュニケーションを取りましょう。
メルマガやSNSの公式アカウントでの接点だけでなく、通販なら商品到着時の同梱物、店舗なら転倒での接客もコミュニケーションの1つです。これらのコミュニケーションが顧客やファンにとっては1つ1つプラスの体験となり、UGC生成に繋がります。
韓国コスメ販売のアモーレパシフィックジャパン株式会社では、ユーザー同士のコミュニケーションができる口コミのコンテンツをオンラインショップ内に導入し、売り上げアップに成功しました。どうしてもネット上では使用感が分かりにくいのが難点のコスメですが、購入したユーザーが動画や画像入りでレビューを掲載できることで、購入前に不安を抱いているユーザーに対する訴求となっています。
このような有益なレビューを投稿してもらうためには、自分自身もレビューに助けられたという既存顧客の経験が蓄積されています。既存顧客やファンを大切にしてきたからこそ、レビュー投稿が活発化している例です。
また、人気のスキンケアブランドである「meeth」も、ブランドの立ち上げ当初からインスタライブなどで情報発信やユーザーとのコミュニケーションを図ってきました。そのため、UGCが自然発生する土壌ができ、レビューを参考に購入したユーザーがレビューを投稿したくなる連鎖が生まれているのです。
店頭に撮影してSNSに上げたくなるような写真ブースを作ったり、オリジナルのハッシュタグを作って店頭に表示して投稿を促したり、通販の同梱物やメルマガでも投稿を呼びかけたりと、あらゆる手段で継続してUGC生成を促す呼びかけを地道に続けていきましょう。
まとめ
多くの情報がネット上で手に入る現代は、いかにも広告色の強いものは嫌がられてしまう傾向にあります。消費者の多くは、WEB検索以上にSNSでさまざまな情報収集をしています。サービスや商品の購入に当たっても、事前にSNSで情報収集するほど、信頼を置いているのです。
そこで「SNS×UGC」を取り入れましょう。UGCは企業が打ち出す広告よりも客観性が感じられ、親しみやすさもあります。UGCを積極的に活用し、生成していきましょう。