SNSはもはや使っていない人はほぼいない、といっても過言ではないほど普及しています。個人だけでなく企業も活用しているというのがそれを物語っています。
しかし、SNSを活用する中で気を付けなくてはいけないのが”炎上”です。企業として、そもそも炎上とは何か、対策についてどうしたらいいのかを理解しておく必要があります。そこで今回は、企業SNSの炎上対策の方法やポイントについてご紹介します。
企業SNSにおける炎上や具体的な原因
これまでに、いくつかの企業で実際に炎上してしまったケースが存在しています。その内容と具体的な原因を知ることで、同様の炎上を防ぐヒントになるでしょう。
何気ないつぶやきによって炎上
企業アカウントは多くのユーザーに注目されています。真面目な投稿もあればユーモアのある投稿もあるなど、その内容はさまざまです。そんな何気ない投稿でも、ふとしたことで炎上してしまうことがあります。
投稿内容自体に問題がなかったとしても、そのタイミングなどがユーザーに不快な思いをさせてしまうことも少なくありません。個人であればなんの問題にもならないような投稿内容であっても、企業アカウントという形であるがゆえに炎上してしまうケースもあるのです。
実際に炎上してしまったケースにおいては、最終的に企業が公式に謝罪・アカウント削除をする事態にまで炎上が拡大してしまうこともあります。
従業員の非常識なツイートによって炎上
企業アカウントによる投稿でないケースでも炎上してしまうことがあります。その一例となるのが、従業員の非常識なツイートによって起きる炎上です。従業員が個人で行っているSNSのアカウントによる投稿内容が炎上してしまった場合、ユーザーの反応が加速してしまい、勤務先の企業アカウントが特定され、炎上することがあります。
たとえば、不動産会社に勤務する方の個人アカウントで、業務上で知り得た芸能人が物件探しにきた、という情報を投稿してしまったことで炎上したケースがあります。プライバシーの侵害であると多くのユーザーが反応し、同時に企業SNSにも批判や避難が殺到する事態になります。このケースでは、最終的には謝罪や賠償責任を問われるような状況にまで発展してしまいました。
もちろん、内容からすれば当然炎上をするのも無理ないものです。しかし、その発端となったのは個人のアカウントとなります。企業SNSとは無関係のように思えてしまいますが、その企業に務める従業員による過ちが、企業SNSにまで影響を及ぼしてしまうことも少なくありません。直接的ではないものの、企業SNSにおける炎上と言えます。
担当者の誤操作によって炎上
意外に企業SNSで起こりやすい炎上が、担当者の誤操作によるものです。
企業が運営しているSNSであっても、必ず担当者が存在しています。人数などは企業によっても異なる部分となりますが、人間が投稿をしているというのは変わりません。担当者自身もSNSを活用していることも少なくありませんが、企業アカウントと個人アカウントを同じ端末で操作している場合、リスクが高くなります。
このリスクというのは、個人アカウントのつもりで行った投稿が、実際には企業SNSによって発信されてしまうケースです。
たとえばこれまでに実際に炎上してしまったのが、ある企業のSNSが特定のミュージシャンに対して中傷的な発言をしてしまったというケースです。ミュージシャン自身がその投稿に言及したことにより、爆発的に拡散され炎上。その後投稿を行った企業が正式に謝罪をする事態にまで発展します。
この件では、企業としての見解ではないという弁明がなされたものの、実際に企業SNSにて投稿されたものですので、かえって逆効果になりました。操作しているのが人間である以上、ミスをしてしまうことがありますが、企業側としては想定外の炎上と言えます。
ユーザーからのクレーム
企業が意図しない炎上の代表例として、ユーザーからのクレームによって発展してしまうケースも存在します。商品の不備や、店頭での従業員の対応や態度などがきっかけとなり、ユーザーがSNSに投稿したことで炎上しがちです。
この炎上の特徴としては、投稿がされてから比較的短時間で一気に炎上してしまいやすいという点です。また、その内容が正しいかどうかは別としてセンセーショナルに取り上げられてしまいやすい面もあります。
基本的にこの炎上では企業側に非がある内容のため、ユーザーも共感しやすいというのも理由の一つとしてあげられます。あとになってユーザー側に非があったと判明したとしても、企業へのダメージは少なからず発生する上、信頼を取り戻す際にもかなりの時間を要するでしょう。
企業SNSで炎上しないための対策
全世界に対して発信するSNSの投稿が炎上のきっかけになってしまうため、あらかじめ対策を取らなければなりません。具体的に有効な対策としては、以下の5つが挙げられます。
企業のSNSアカウントに運用ルールを策定する
運用面の不備によって炎上してしまうケースに関しては、複数名のスタッフによって運用されることが多いため、担当者によって認識が異なってしまうことに由来することが多いです。
まずは企業のSNSアカウントに対して、運用ルールをしっかりと策定しましょう。SNSの炎上は勝手に起きてしまうわけではなく、必ず原因があります。過去の事例を参考にして原因と対策を明確にし、それを回避するための運用ルールを設けることが大切です。
運用ルールを策定することによって、属人化を防ぐという効果にも期待ができます。運用する中で担当者が変更になることは容易に想像できるため、新しい担当者も同じように運用できるようにする意味でも、運用ルールはなくてはならないものといえるでしょう。
従業員に対してのソーシャルメディアポリシーを策定する
炎上の原因となる遠因として、ソーシャルメディアポリシーが徹底されていないことも考えられます。従業員が安易な気持ちで企業SNSの運営に携わっていると、いつの日か炎上するような事態を引き起こしてしまいかねません。従業員に対して、ソーシャルメディアポリシーを策定することはマストといっても過言ではないでしょう。
企業がSNSを通じてどのような目的を果たしたいのかを明確にし、全従業員が遵守できる状況にします。その他にも、SNSに参加する上での心構えも明示しましょう。個人でも気軽にSNSに触れる現代では、企業SNSとの線引きが曖昧になってしまいがちです。その緩みが炎上につながってしまう恐れがあるため、ソーシャルメディアポリシーの策定によってSNSの関わり方を明確にしましょう。
炎上リスクが理解できるようにするための研修を実施
企業SNSを運用するために大切なルールやソーシャルメディアポリシーを策定しただけで炎上しなくなるかというと、そうでもありません。従業員の一人ひとりがその重要性を理解している必要があります。
運用ルールやソーシャルメディアポリシーがなんのために存在してどのような意味があるのかなど、SNS炎上をしてしまった場合の怖さも含めて理解をしてもらわなければならないのです。
研修を実施して、具体的な事例を紹介しつつ認識を改めてもらいましょう。SNSの担当者でなくても、すべての従業員が当事者意識を持つことが大切です。意識する部分はアルバイトや正社員など立場によって若干の違いはありますが、企業として炎上してしまうリスクを少しでも下げなければなりません。
従業員の中で研修内容が浸透することによって、SNS炎上のリスクが軽減されることになります。
炎上の火種を早期発見するためのモニタリング
どれだけ研修を行ったとしても、人間である以上はミスが発生してしまうことは避けられません。企業SNSで問題行動あるいは投稿を行ってしまった場合、ミスを早急に発見して迅速な対処を行えるかが重要です。
万が一炎上してしまった場合に、スピード感や初動対応を誤ってしまうと炎上に繋がります。一般的に話題になってしまうほど、炎上してから企業が炎上を察知するのでは遅すぎます。他のユーザーよりも少しでも早くミスを発見できるような体制としてのモニタリングが欠かせません。
たとえば投稿内容によって炎上するリスクが発生した場合、投稿をした担当者がすぐに過ちに気が付けたら理想的です。しかし、投稿直後に発見できないケースもあり、そうなると一般ユーザーとのスピード勝負になります。
リスクが発生した際の危機対応フローの構築
万が一、炎上してしまうような事態に陥ってしまった場合、危機対応フローの存在有無はとても重要なポイントです。
炎上するような投稿をしてしまった場合など、現場では対処法を決定できないケースも少なくありません。ミスを発見した場合に、どのようなフローでエスカレーションするのかなど判断基準が明確になっていないと、拡散や炎上が広まってしまう恐れがあります。
迅速な対応ができるような体制づくりをしておくことで、炎上による被害を最小限に抑えることが可能です。また、いざというときに機能しなければ意味がありません。定期的に危機対応フローなどの認識を改めることも大切です。
そもそも、担当者によって対応が異なってしまうのは問題です。あらかじめ危機対応フローを構築しておくことで、担当者に関わらず常に一定の行動を取ることが可能となります。企業の状況次第で変更が生じることも少なくないため、定期的に修正などが必要かのチェックも行いましょう。
企業SNSで炎上してしまった場合の対処法
どれだけ運用ルールやソーシャルメディアポリシーなどを策定したとしても、炎上することがあります。企業だけでコントロールできるものではないため、大切なのはいざ炎上したときにどのような対処をするのかという部分です。具体的には以下の3つのポイントを押さえておくことをおすすめします。
状況を正しく把握する
企業SNSが炎上してしまった場合、想定していない状況のため焦ってしまいがちです。もちろん混乱してしまうのは当然ではあるものの、まずは冷静になることが大切です。そしてしっかりと状況を把握しましょう。
まずはSNSなどで自社のことを検索して、どのような状況下にあるのかを把握することから始めます。炎上がどの程度にまで広がってしまっているのかのチェックも必要です。あくまでも一部だけなのか、すでに世間に広まってしまっているレベルなのかによって適切な対応も変わってくるからです。
また、炎上してしまった原因や経緯についても正確に把握しましょう。その点が曖昧であったり、理解できていなかったりする場合には謝罪や対応も意味のないものになってしまいますし、かえって炎上を拡大してしまうことになってしまいかねません。できる限り落ち着いた状態で、素早く以上のことを正確に把握することが先決です。とりあえずの謝罪などは避けるようにしましょう。
投稿をむやみに削除しない
自社が炎上していると知ったとき、その原因がSNSの投稿であった場合、ついつい反射的に該当の投稿を削除してしまいそうになりますが、それは避けましょう。
一見最適な対応のように思えるかも知れませんが、ユーザーや世間に対して誠意がないとみなされてしまう恐れがあるため、適切な対応ではありません。そもそも炎上してしまった経緯が判明していない中で投稿を削除してしまうことにより、その投稿に問題があったと認めてしまっていることになります。
その意図はなかったとしても、世間やユーザーたちがそう受け止めてしまったらそれまでです。良くも悪くも投稿には触れないまま、現状把握に努めましょう。もちろん、方向性が明確になった上で削除が適切であるという判断に至った場合には、速やかに該当の投稿を削除するべきです。
また、削除をしたとしても結局のところユーザーによって保存(Web魚拓)されてしまっているケースが多く、その場しのぎの削除は無意味です。むしろ拡散を促進してしまう可能性すらあります。
方向性や内容をしっかりと判断した上で謝罪の段取りをする
炎上してしまった原因や炎上に至った経緯などが正確に把握できたら、謝罪などその後の対応について方向性や内容をしっかりと判断します。
重要なのは初動です。初動において適切な対応ができれば、基本的に炎上は沈静化に向かいます。初動対応が適切でなかった場合、むしろ炎上がさらに加速してしまうケースが多いでしょう。あらゆることを想定した上で方向性などを決定する必要があります。
また、謝罪することがベストであるとは言い切れません。場合によっては謝罪することがマイナスに働くこともあります。炎上の原因や流れなどをしっかりと汲み取った上で、それでも謝罪をするべき内容と判断するのであれば問題ありません。炎上=謝罪という図式が出来上がりつつありますが、実際はそれだけではないため、柔軟に内容に合わせて適切な対応を取ることが大切です。
具体的な対応例
炎上してしまった場合の具体的な対応例を紹介していきましょう。
・企業や企業関係者に非があるケース
まずは限定謝罪を行いましょう。謝罪の対象を明確にした謝罪のことを、限定謝罪といいます。ただの謝罪ではなんの誠意も感じられないと受け止められますので、謝罪の対象は明確にしなければなりません。その後、経緯や原因、再発防止策などの発表と合わせて関係各位への謝罪をおこなうという本格的な対応が望ましいでしょう。
・企業や企業関係者に非がないケース
世間を騒がせてしまったことに関する限定謝罪を行った上で、非がないことを明確にしましょう。非がないという事実がはっきりとすることにより、基本的に事態は終息へと向かいます。ただし、場合によっては事実確認がすぐにはできないケースも考えられます。その場合は放置することによって炎上が加速してしまう恐れもあるため、原因調査中であることを説明した上での限定謝罪がおすすめです。調査の結果企業側に非があったのか、なかったのかによって本格対応の方向性は変わります。
まとめ
企業SNSが炎上してしまう主な原因としては、不適切な行為やリアルでの不祥事、個人の所属企業であることなどが挙げられます。炎上後の対応次第では、さらに大きな問題になってしまうことも少なくありません。まずは炎上しないような対策を取ることが大切です。
その上で、万が一炎上してしまった場合には、早急に沈静化するために適切な対処を行いましょう。想定通りに進むことは少なくないものの、あらかじめ想定しておくことは大切なことです。いざというときに企業として被害を最小限に抑えることに繋がります。
うまく活用することで多くのメリットがあるSNSですが、炎上にだけはくれぐれも気をつけましょう。