スマートフォンやSNSの普及によって注目を集めるSNSマーケティングは、LINEやTwitter(エックス)など身近なツールを使えることもあり簡単に参入できます。一方でフォロワーが増えないなど、うまく運営できずに「失敗かも?」と頭を抱えている担当者がいるのも事実です。
本記事では、企業のSNSマーケティングの失敗例を取り上げ、そこから何が学べるのか、失敗を避けるためにはどうするのかについて解説します。
SNSマーケティングにおける失敗とは
SNSマーケティングにおける失敗とは、目標や目的を達成できない、つまり集客ができないことです。SNSマーケティングにおける失敗について解説します。
SNSマーケティングはどうなると失敗?
SNSマーケティングにおける失敗とは「アカウントのフォロワーの数が増えない」「投稿したコンテンツに反応がない」など集客できないことを指します。
インターネットおよびスマートフォンの普及によりSNSの影響力が大きくなった今、多くの企業がSNSマーケティングを取り入れています。SNSマーケティングを成功させるには、投稿するだけではなく競合との差別化を図ることが必要です。
以下、SNSマーケティングの失敗例について解説します。
失敗例①ユーザーが不快になる
以前は不快な気持ちになっていたとしても吐き出す場がなかった人が、SNSに本音を投稿するようになりました。SNSが発達するにつれ、賛同する人が一定の数集まることにより大きな問題に発展しやすくなっています。
問題になりやすいのはジェンダーに関することや宗教的なもの、差別的な表現、見下すような表現、下品な表現、著作権を侵害しているなどです。
投稿する側にそのような意図はなくても、大切なのはユーザーがどう受け取るかです。多くは一方的な物の見方や、自分がこう思うから他人も同じように思うだろうという思い込みが原因で起こります。誰が見ても誤解や不快な気持ちを抱かないような投稿になるよう注意しましょう。
失敗例②悪い評判が広まる
ある飲食店が自社の話題をSNSで募集したところ、悪評ばかりが集まってしまったという事例がありました。SNSの怖さは根拠がない、嘘の情報でもほどなく広まってしまうこと、それを企業側がコントロールできないところにあります。誰もが知っているような企業ほど批判的な投稿や悪意のある投稿がされやすい傾向にあります。
SNSは影響力が強いことがメリットである反面、悪い評判も広まりやすいリスクがあることも理解しておきましょう。誇大広告や継続できないような取り組みにも注意が必要です。
失敗例③ユーザーにメリットがない宣伝
ハッシュタグを使ったキャンペーンは効果的ですが、参加するユーザーにメリットが感じられるものでないと宣伝ばかりととられることがあります。
たとえば投稿と関係ないハッシュタグや人気のあるハッシュタグを大量に設置するなどです。関連性の高いハッシュタグを厳選して使う、独自のハッシュタグを使うなど適切・適度に使うことでターゲットとなるユーザーに届く可能性が高まります。
SNSが持つ拡散力を活かしたいのであれば、「人に伝えたいと思わせる価値のある情報」を発信しなければなりません。一方的な宣伝のみではユーザーに拒絶されてしまうでしょう。
失敗例④SNSマーケティングに不向きな商品を扱う
たとえば育毛剤などはSNSマーケティングで扱いづらい商品といえるでしょう。こうした商品やサービスについては他の販売経路を探ったり、商品やサービス自体を押し出すのではなく、会社の取り組みや他サービスで関わりを持ってもらったりする必要があります。
失敗例⑤インフルエンサー選びの失敗
インフルエンサーマーケティングは、フォロワー数の多いインフルエンサーを起用して、自社の商品やサービスを紹介または使用してもらい認知度を高めたり、購入者を増やしたりするマーケティング手法です。
インフルエンサーの選定を間違ったことが原因でSNSマーケティングが失敗に終わることもあります。よくある例としては、以前不祥事を起こしていた、狙っているターゲット層に好かれていない人だったなどです。
インフルエンサーは商品やサービスだけではなく企業のイメージにも影響します。選定は複数のメンバーで慎重に検討することをおすすめします。
失敗例⑥炎上してしまう
投稿したツイートが「炎上」し、SNSマーケティングをストップする企業もあります。どんなに注意深くツイートしていてもSNS上にはさまざまな考え方をする人が集まっているため、炎上のリスクは常にあるといっても過言ではありません。
大切なのは炎上したときにどう対処するのかということです。炎上に気づいた時点で早急に対策して「火消し」をする必要があります。拡散されるスピードを考慮してできる限り早く対応しましょう。
発信する内容に気を配ることは大切ですが、だからといって炎上を恐れすぎるとSNSマーケティングはできなくなってしまいます。炎上や想定外のことが起きる可能性などは必ずあることと理解しておきましょう。
わざと炎上するような投稿をして注目を集める「炎上商法」をするところもあります。しかし炎上すれば一般的に企業の評価は下がります。数年後も忘れられることなく残ることも考え、企業でアカウントを運用する場合は炎上しないような施策が必要です。
SNSマーケティングが失敗する原因
ここではSNSマーケティングが失敗する原因を解説します。原因を分析し、なぜ失敗するのかを考え修正していくことが成功させる秘訣です。
目標・目的があいまいである
何のためにSNSマーケティングを行なうのか目的や目標がわからないまま運用していても、発信する情報の方向性が定まらずフォロワーは増えないでしょう。
なぜSNSマーケティングをする必要があるのかを深掘りしていき、目的を明確にします。はじめた理由が今時SNSくらいやっておかないといけない、競合もSNSをやっているから、といった曖昧なものでは失敗する可能性が高いと言わざるをえません。
大前提としてどのマーケティングも目的は集客することですが、そのために今、自社に必要なのは新規顧客の獲得なのか、売上アップなのか、企業の認知度を高めることなのかなどによりやり方が変わってきます。目的・方向性が定まらないSNSマーケティングは、運用方法も曖昧になり望むような結果を残せないでしょう。
ペルソナ(ターゲット)が定まっていない
誰に向けて発信するのかを決めないままマーケティングをしても、成果はのぞめません。マーケティングでは戦略を立てる場合、商品やサービスがどんなユーザー向けなのかを明確化するのが通常のやり方です。SNSマーケティングでも同様で、効率的にマーケティングをすすめるためにペルソナ(ターゲット)を設定します。
商品やサービスを利用するペルソナ(ターゲット)設定ができていても、発信の方向性が決まっていないと失敗することもあります。SNSでもペルソナ(ターゲット)に合わせた情報発信が必要です。
プラットフォームの選定失敗
SNSのプラットフォームにはそれぞれ特徴があります。各プラットフォームのユーザーを無視した投稿を続けても、反応が得られないばかりか悪い評価につながる可能性もあります。
はじめに各プラットフォームの特徴を整理・理解し、年齢層や男女比などどんなユーザーがメインで利用しているのかを把握することから始めます。自社や自社の商品、サービスとの相性を考えどのプラットフォームが適しているのかを決定しましょう。一つに決める必要はなく、相性が良いと思われる場合は複数のプラットフォームを活用する方がより効果的です。
例をあげると女性向け商品の販売ならメインユーザーは20代〜30代の女性が多いInstagram、商品の解説を詳細にしたいという場合は長時間の動画の投稿が可能なYouTubeが向いています。ターゲットや商品、サービスに合ったSNSプラットフォームの選択がマーケティングが成功するかどうかを左右します。
KPI(重要業績評価指標)が未設定
漠然とSNS投稿をしていても課題が見つからないと改善のしようがありません。SNSマーケティングにおいてはどのくらいのユーザーが見ているのか、効果が出ているのかを把握し、問題点を明らかにする必要があります。
マーケティングでは、KPI(重要業績評価指標:目標を達成するための目安になる数値)を設定することが必要です。具体的には投稿するコンテンツの数、フォロワー数、インプレッション数、いいねやリツイートなどのエンゲージメント数(率)などです。データを分析しどんなコンテンツが効果的なのか、購買などの行動につながったのかを確認し、課題を改善していきましょう。
運用体制が整っていない
SNSマーケティングの成功には知識やノウハウが必要です。知識やノウハウがなければ、マーケティングの運用に必要な戦略が立てられないからです。
SNSマーケティングを行なうには人材や時間などリソースの確保が必須といえるでしょう。社内でSNSマーケティングのすべてをしようとする場合、大きな効果を出したいのであれば複数の担当者を置くなど、それに応じた体制が必要になります。
SNSマーケティングは他の業務と兼用でできるほど簡単ではありません。コンテンツの作成や投稿、投稿時間の管理、投稿の検証、問題点の改善などSNSマーケティングにおいては多くの作業が必要です。
またマーケティングの効果が感じられるまでこれらを繰り返し行っていかなければなりません。リソースの確保なしにはSNSマーケティングは成り立たないことを理解しておきましょう。
運用方法に問題がある
各SNSプラットフォームにより適した投稿のペースは違います。SNSマーケティングにおいては定期的な投稿は重要ですが、投稿するペースや時間を間違えると、フォロワーに気づかれない、見てもらえないということが起こるでしょう。
ターゲット層の行動パターンを考え、最適な時間帯を推測しましょう。ターゲットが主婦なら10時や15時ごろなど家事が落ち着く時間帯を選び、会社員がターゲットなら朝の通勤時間、学生なら深夜などといったところです。また、投稿が多すぎると嫌われる、少なすぎると気づいてもらえないことがあります。投稿は少なめの回数からはじめ、反応を見ながら調整していきましょう。
投稿の内容はユーザーが興味を持つものにしなければなりません。差別化のためには、ユーザーが知って得をしたと思うようなコンテンツを発信し続けるための努力が必要です。ブランド力を下げないためにも一つひとつの投稿に手を抜かず、質の高い内容に仕上げましょう。
SNSマーケティングにおいては、商品やサービスの売り込み、紹介だけではなくユーザーに価値ある情報でなければ拡散されません。商品やサービスの情報をユーザーに面白い、役に立つと思えるものと絡める、変化させるという技術が必要になってくるでしょう。
SNSユーザーはシビアな感覚を持っているため、売り込もうという雰囲気を感じ取ると見てもらえない可能性があります。ユーザーが不快にならないような表現で印象に残る内容にすることが大切です。
そのほか、SNSは発信だけではなく、企業側からユーザーにフォローやいいねでアプローチすることも可能です。ただし、ターゲット層にあたるユーザーにだけにしておかないと無駄になりかねません。また1日の間に多数のユーザーにいいねを一斉にすると炎上することもあるため、数人程度にしておくのが無難です。
SNSマーケティングの失敗を回避するために
SNSマーケティングでの失敗を回避するには、失敗事例を知り、問題点を明らかにしてそこから学びましょう。ここでは失敗を回避するために必要なことをまとめ解説します。
事前に戦略を練る
まずはSNSマーケティングでの目的・目標を考えましょう。どんな結果が欲しいのか、何を実現したいのかを明確にします。ここが定まっていないままでは発信の内容もあいまいになり、統一感がなくなってしまいます。
次に大切なことは、マーケティングを行なうための運用体制を整えることです。SNSマーケティングを専門に行う人員や時間を確保しましょう。SNSマーケティングは一見手間がかからないような印象を持たれがちですが、質の高いコンテンツ作成や適切な運用の継続にはリソースの確保は必須です。またKPIを設定し、定期的なデータ分析をして改善していくのを忘れないようにしましょう。
ペルソナ(ターゲット)の設定とニーズの把握もSNSマーケティングにおいて重要です。アカウント運用の場合同様、SNS広告を使ったマーケティングの場合でも年齢や地域を細かく設定することが必要です。ペルソナ(ターゲット)に合わせた投稿によってユーザーに響くコンテンツとなり、マーケティングの効果が出やすくなります。
またペルソナ(ターゲット)に合わせてプラットフォームを選ぶことも大切です。各プラットフォームの特徴を知り、メインユーザーの年齢層や性別などを参考に選択します。Twitterは拡散性が高い、Facebookは実名性が高い、Instagramは写真、YouTubeは長時間の動画が可能、Tiktokは動画を作るハードルが低いといった特徴があります。
運用段階で大切なこと
運用段階で大切なのは、投稿の頻度や時間に注意することです。各SNSプラットフォームのユーザー層の行動を考え、最適な時間帯を選んで投稿しましょう。また投稿の頻度も少なすぎる場合気づかれない可能性があり、多すぎるとしつこいと思われる可能性が高くなるため最適な頻度を守ることが大切です。
また、投稿の内容もユーザーの共感が得られるもの、ユーザーが知って得するものにする必要があります。広告・宣伝色が強いものは受け入れられないと考え、直接的に売り込むのではなくコンテンツの中にうまく伝えたいことを入れる技術が必要です。
SNSマーケティングにはPDCAサイクルを回していくことも必要です。SNSマーケティングではユーザーの反応をみて、修正・改善していくことで集客が伸びます。とくに計画とチェックは重点的に行ないましょう。
炎上に注意する
公式アカウントであるにもかかわらず、事実でないことを発信すると炎上とまではならなくても評価が下がったり、投稿自体にはとくに問題がないのにタイミングが悪く炎上することもあります。
炎上を避けるには、担当者ひとりに任せるのではなく2人あるいは3人でチェックするといった対策をしましょう。SNS運用担当者がコンテンツの作成から投稿まですべて1人でする体制の場合、投稿内容についてチェックが入らないため炎上を招く可能性が高くなります。
炎上して取り返しがつかなくなることも珍しくありません。SNSではどんな投稿も炎上する可能性があると考え、担当者1人に任せるのではなく社内全体で炎上を防ぐことが大切です。
まとめ
SNSマーケティングは参入のハードルは低くても、運用を継続し結果を出すには時間も人手も必要です。そのため失敗に終わる企業も後を絶ちませんが、失敗がどうして起きたかをあらかじめ知っておけば自社のSNSマーケティングに活かせます。
SNSマーケティングの成功にとくに必要なのは、事前に戦略を練ること、運用段階ではPDCAを常に回して改善していくこと、炎上対策をとっておくことです。