ユーザーとって有益となる商品やサービスを提供するには、「UI」や「UX」の改善が不可欠です。UIやUXについては、まだまだ一般的にどんなものかは知られていないのが実情です。
UIやUXは似た言葉ですが、意味は大きく異なります。顧客満足度を高めるためにも、UIやUXの意味を正しく把握し、ユーザーに寄り添ったサービスの提供を考えていくことが大切です。
UIとUXは異なるもの
UIとUXは似ており、まとめて語られることがあります。しかし、UIとUXは意味が大きく異なるため、切り離して考えるのがベターです。
一方で価値のある商品やサービスを提供するには、良質なUIやUXでなければなりません。UIが良質でもUXの品質が劣っていると、価値のある商品やサービスの提供が難しくなるのです。UIとUXはひとつの要素として捉えておくとよいでしょう。
UIとは?
UIやUXは売上に大きな影響を与えると考えられており、最近ではIT業界以外でも用いられています。ここでは、UIの意味や具体例について見ていきます。
UIの意味
UIとは、英語の「User Interface」の頭文字から取られた言葉です。日本語に訳すと「顧客接点」という意味があります。IT分野におけるUIとは、全てのユーザーが得られる情報のことです。フォント、デザイン、レイアウトなどがUIに含まれます。
UIはインターネットの黎明期から意識がなされています。コンピューターが登場した頃は、コマンドラインを入力してコンピューターに指示を与えていました。しかし、Apple社が開発したMacintoshコンピューターでは、画面上のウインドウを操作するだけで、コンピューターに指示を出せるようになりました。
2000年代に入ると、スマートフォンが普及し始めます。2007年にはiPhoneが発売され、簡単な操作でさまざまな機能を扱えるようになりました。UIの進化によって新たなユーザーの獲得に成功しているのです。
良質なUIとは?
UIには良質なものと悪質なものがあります。UIが良質であるなら、顧客を獲得しやすくなります。良質なUIの例は以下の通りです。
・文字ボタン、装飾、レイアウトが見やすく設定されている
・理解しやすい言葉で商品やサービスの説明がなされている
・どのページに移動しても、すぐにTOP画面に戻れる
・フォーム画面に入力補助の機能が付いている
・必要な情報の整理がなされている
・ボタンを設定している場合、押したことがわかるようになっている
・アプリを操作するときの動きがユーザーのイメージ通りである
・ユーザーが見つけたい情報について、簡単に見つけられるように設定されている
・ユーザーが迷わずに商品を購入できる
良質なUIを目指すには、ユーザーの目的を果たしやすく設計されていることが重要です。ユーザーに考えさせないように利用してもらうことを意識することが大切です。
悪質なUIとは?
一方で悪質なUIとはユーザーの目的を達成できない状態のことです。迷いや混乱を与えてしまうUIの場合、ユーザーの不満を招く恐れがあります。サービスの利用頻度や定着率にも影響を与える可能性があります。
UXとは?
UXはUIと同じように、売上に大きな影響を与えると考えられています。
UXの意味
UXとは、英語の「User Experience」の略語です。日本語に訳すと「顧客体験」という意味があります。IT分野におけるUXとは、ユーザーが商品やサービスを通して得られる体験のことです。「楽しい」、「面白い」、「美しい」という感想に加えて、「対応がよかった」、「他社の製品よりも使いやすい」という感想もUXに含まれます。
UXの重要性
以前はUIが重視されていましたが、最近ではUXにも注目が集まっています。企業の例では、レシピ検索サイトのクックパッドでは「料理きろく」という機能を導入しました。スマートフォンから画像だけを自動で抽出して、毎日の料理記録を作成する機能です。
ユーザーは「料理きろく」を確かめるだけで、家族の栄養管理や毎日の献立を簡単にチェックできるようになりました。
大手飲料会社であるコカ・コーラでは、スマートフォンアプリの「Coke ON」を新たに導入しました。スマートフォンに対応した自動販売機とつながっており、ドリンクを購入するとスタンプを集められます。
スタンプを一定数ためると、自動販売機で好きなドリンク1本と交換できます。スタンプを集める楽しさと、ドリンクを無料で手に入れられるお得感があり、多くのユーザーから高い評価を得ています。UXを取り入れることで、企業の認知度の向上や新しいユーザーの獲得などの効果を得られるのです。
ARやVRを取り入れたUXも広まっている
最近ではUXの効果を高めるために新しい技術が取り入れられています。新しい技術のひとつはARです。ARとは、英語の「Augmented Reality」の頭文字から取られた言葉で、日本語では「拡張現実」という意味があります。ARとは、目の前の風景に仮想の空間を加える技術のことです。
もうひとつの技術はVRです。VRとは、英語の「Virtual Reality」の頭文字から取られた言葉で、日本語では「仮想現実」という意味があります。VRとは、非現実の世界を実際にある世界のように見せる技術のことです。それぞれの技術を用いることで、現実では得られない体感をユーザーに提供できるのです。
UIとUXの関連性
UIとUXは異なるものですが、関連性はあります。優れたUXを構築するには機能性の高いUIを設計しなければなりません。
一方でUIが優れていても、サイトに魅力が無ければユーザーの獲得や維持は難しくなります。UXを意識しながらUIを設計する必要があるのです。
UIとUXが重要視されている理由
ITビジネスにおいてはUIやUXが重要とされています。ここでは、優れたUIやUXが求められる2つの理由について詳しく見ていきます。
顧客満足度に影響を与える
1つ目の理由は顧客満足度の向上です。顧客満足度とはユーザーや商品を購入したりサービスを利用したりする際に感じる満足感のことです。
顧客満足度が高ければ、自社の製品の再購入や再利用につながります。顧客満足度を高めるには、販売する商品や提供するサービスの方向性や考え方を明確にしなければなりません。優れたUIやUXを構築できれば、ユーザーの求める商品やサービスを提供できるのです。
インターネットが身近な存在になっている
2つ目の理由はインターネットの普及です。近年では全ての世代でインターネットが普及しており、サービスのデジタル化が進んでいます。IT技術の進歩により、さまざまな分野でインターネットが用いられるようになりました。
デジタル化されたサービスを利用する際、商品やサービスをユーザーにつなげるのがUIです。UIでインパクトを与えられれば、商品の購入やサービスの利用に誘導できるはずです。一方でインパクトを残せなければ、ユーザーを失う恐れがあります。優れたUIやUXを構築できれば、自社の商品やサービスを利用してもらえるのです。
優れたUIやUXを構築するには?
UIやUXが重要であることはわかるものの、優れたUIやUXの定義についてはどんなものが挙げられるのでしょうか。ここでは、優れたUIやUXを構築する際に押さえておきたい3つのポイントをご紹介します。
ユーザー目線で設計されている
1つ目のポイントはユーザー目線での設計です。魅力的なデザインになっていても、ユーザーが使いにくいと感じることがあります。また、コンテンツが良質でも、読み込みが遅いと飽きられてしまうはずです。
UIやUXを構築するときには、ユーザーが求めているものを見極めることが大切です。利用者のターゲットの絞り込みと、ユーザーの利便性が高まる場合があります。
情報が絞られている
2つ目のポイントは情報の制限です。インターネットの普及により、簡単に情報を拾えるようになりました。その結果、SNSでは多くの情報があふれています。
ユーザーにさまざまな情報を与えてしまうと、本当に必要としている商品やサービスを見失う恐れがあります。UIやUXを構築する際には、情報を整理しなければなりません。ユーザーにとって必要となる情報のみを提供することで、顧客満足度が高まるのです。
Webサイトには「Fの法則」が用いられます。Fの法則とはユーザーがWebサイトを閲覧する際の目の動きのことで、アルファベットの「F」のように視線を移動させることから名付けられました。
ユーザーは情報を取り入れるときに左上から右下へと目線を動かします。また、下に移動したときには、左から右へと視線を動かすのです。
情報を提供する際にはFの法則に倣いましょう。重要な情報は上に、サイドバーは右側に設定するのがおすすめです。
デバイスが意識されている
3つ目のポイントはデバイスの意識です。デバイスとは情報機器や端末機器のことで、パソコン、タブレット、スマートフォンなどを指しています。
以前はパソコンでインターネットを利用するのが一般的でしたが、最近ではスマートフォンを利用するユーザーが増えています。
パソコンを利用するユーザーをメインにUIやUXを構築した場合、スマートフォンを利用するユーザーには使いにくいということがあるはずです。
UIやUXを構築する際には、デバイスの意識が重要です。最近ではスマートウォッチなどのウェアラブル端末が普及しています。ウェアラブル端末のような小さな画面にも対応できるUIやUXの構築も求められているのです。
UIを改善する際のポイント
ユーザーにとって利便性の高いUIやUXを構築するには、定期的な改善が欠かせません。
シンプルなインターフェースを心がける
1つ目のポイントはシンプルなインターフェースです。インターフェースとは、英語の「Interface」を由来とした言葉で、システムやソフトウェアを使って情報のやり取りをする際に使用する機能のことを指しています。
Webサイトやアプリをスムーズに使ってもらうためには、ユーザーに考えさせないことが大切です。ユーザーの疑問や不安を取り除くためには、できるだけシンプルな設計にするとよいでしょう。UIの構築に慣れてしまうと、ユーザーの疑問や不安に気づけなくなってしまいます。
最初は「わからない」と感じたものが、次第に「自分がわかるのだから、ユーザーもわかるだろう」と考えるようになってしまうのです。ユーザーの目線を意識しながら、不必要な要素を取り除くことが大切です。
標準的なコンポーネントを使用する
2つ目のポイントは標準的なコンポーネントの使用です。コンポーネントとは英語の「Component」に由来しており、ソフトウェアやシステムを構成する部品のことを指しています。
コンポーネントを使用する際には、できるだけユーザーにとってなじみのあるものがおすすめです。安心して利用できますし、スムーズに使ってもらえるはずです。
デフォルトを慎重に選定する
3つ目のポイントはデフォルトの選定です。デフォルトとは初期状態の設定のことで、一般的にはユーザーがすぐに利用できるように設定されています。
デフォルト画面やシステムが複雑な状態の場合、ユーザーの負担が大きくなります。場合によっては利用を避けられる恐れがあります。ユーザーが特別な設定をしなくても気軽に使えるデフォルトを選定しておくのが大切です。
見やすさを意識する
4つ目のポイントは見やすさです。フォントの色や大きさ、背景の色などは改善を図る際の重要な要素のひとつです。フォント背景に同じ色や似たような色を用いると、ユーザーが見落とす恐れがあります。大切な情報を見落とした場合には、トラブルに発展する可能性があります。
また、インパクトを与えるためにさまざまな色を使ってしまうと、ごちゃごちゃとした印象を与えかねません。見やすさを意識しながら、フォントやアイコンを設定しましょう。
検証を繰り返す
5つ目のポイントは検証です。UIを構築した際には、検証しましょう。また、検証は1回だけではなく。定期的に実行するのが重要です。
使用中に違和感を覚えたり、他の部分にエラーが生じたりしたら修正するように心がけることが大切です。また、利便性を高めるため、他の方法を取り入れてみるのも大切です。
UXを改善する際のポイント
UXについてもUIと同じように定期的な改善を心がけましょう。ここでは、UXの改善で押さえておきたい4つのポイントをご紹介します。
ターゲットの設定
1つ目のポイントはターゲットの設定です。UXを構築する際には、どのユーザーに向けて発信するのかを決めておくとよいでしょう。
ターゲットを明確にする方法のひとつとしてペルソナの設定があります。ペルソナとは仮想的な人物像のことで、サイト、商品、サービスを利用する典型的なユーザーを表すために作成します。ペルソナを設定すれば、商品やサービスを利用する動機やニーズなどの洗い出しができます。
競合との比較
2つ目のポイントは競合との比較です。競合のWebサイトやアプリなどと比較して、強みや弱みを見極めることが大切です。弱みを見つけたときには、弱みを解消するためのアイデアを創出しなければなりません。
ユーザーの行動を解析する
3つ目のポイントは解析です。ユーザーの行動を解析する方法のひとつにアクセス解析があります。アクセス解析とは閲覧者の環境や特性などを分析する解析方法のことで、Webサイトの全体のアクセス数、Webサイト上でのユーザーの動き、Webサイトに訪れるまでの経緯などがわかります。
ユーザーの行動を解析する別の方法はヒートマップです。ヒートマップとはWebサイトを閲覧したユーザーの行動を色の濃淡で表現したグラフのことで、数値を色で表すことでデータを可視化できます。
アクセス解析やヒートマップなどはユーザーの動きを把握するのに有効です。ただし、具体的な問題点を洗い出すにはユーザーに尋ねるのがよいでしょう。
ユーザーテストを実施すれば、ユーザーが感じている不安や疑問などがわかります。ポップアップなどを利用すれば、ユーザーテストが可能です。
プロトタイピング
4つ目の方法はプロトタイピングです。プロトタイピングとは、英語の「Prototyping」が由来となっており、日本語では「試作」という意味があります。ユーザーの行動を解析したら、プロタイピングを設計しましょう。
プロトタイピングによってアイデアを形にすれば、新しい課題が見つけられます。また、ユーザーが持つ不安や疑問の解消をチェックできるはずです。
まとめ
UIとUXは似たような言葉ですが意味は異なります。ただし、Webサイトやアプリの設計では重要な役割を持っています。
優れたUIやUXを構築すれば、新規のユーザーの獲得が可能です。顧客満足度が高まれば、リピーターや固定客の増加にもつながるはずです。
良質なUIやUXを構築するには定期的な改善が重要です。UIについては、シンプルなインターフェースや標準的なコンポーネントを意識することが大切です。UXについては、ターゲットの設定やユーザーの行動の分析で改善を図れます。